現代のおとぎ話2019年02月28日

今年も3.11が近づいてきたが、8年前のあの地震のあと作った下手なお話。

昔むかし、メソポタミア地方に優れた文明を持つシュメール人が住む地域がありました。
チグリス・ユーフラテス川のほとりに生まれた世界4大文明の一つであるシュメール文明は、当時の最高技術である灌漑の技術を使った農業などによりすばらしい繁栄を築きました。しかしその後この文明は滅亡します。
その滅亡の原因となったものこそ、人々に豊かさをもたらした灌漑技術自身でした。灌漑には塩害という副作用があり、塩害によって結局高度な文明が滅ぼされるという終焉を迎えました。

時は移って、産業革命に端を発した科学技術の進歩により、地球規模の繁栄が現代まで続きました。しかし化石燃料をエネルギーとして使い続けた結果、大気中の二酸化炭素(CO2)濃度が上昇し続けました。
大気中のCO2が増えることによって生ずる温室効果による地球温暖化の防止を訴える環境主義者は、過去の文明滅亡の歴史などを引用して、現代文明が生み出すCO2がその滅亡の要因になるとし、だからこそクリーンな原子力発電が必要だと説きました。原子力発電こそ、大気中の二酸化炭素の増加を抑えるのに最も有効な技術であることは間違いありませんでした。何事も起こらなければ電気エネルギーはそのほとんどが原子力発電によって作り出され続けたでしょう。しかし、原子力発電所に事故が発生した場合の恐ろしさがある国で明らかとなり、さらにその後起こった極東の国の大震災により決定的な結末が導かれてしまいました。

人類に豊かな生活を与えてくれる新しい科学技術にはそれがもたらす便利さの反面、副作用がつきものです。問題は人がその副作用を克服しきれるかどうかにかかっている。原子力はエネルギーの持続性や環境に対するクリーンさで人類の未来にとって欠かせない技術であった。しかしまだ人の力では手に余る悪魔の火でもある。津波に対する安全性見通しを誤ったことにより最悪の結果を招き、人々は原子力に対しヒステリックなくらいに否定的となり、そのことがまた未来のエネルギーの希望を潰してしまうことにもなった。

結局、皮肉なことに滅亡の要因になるのはCO2よりも先に、環境主義者達が神の火と崇めた原子力発電でした。そして原子力発電こそ現代文明が生んだかつてのシュメールの灌漑技術でありました。
果たしてその後、人類は原子力などの新しい技術の問題点を克服して持続的な未来を築けたのか誰も知りません。

おしまい