オペレーショナリズム2019年03月14日

前にプラグマティズムについて少し書いたが、オペレーショナリズムはプラグマティズムの科学技術領域への発展形と言えるだろう。超高圧静的圧縮機や高圧シール技術を発明したアメリカのブリッジマンが主張した実践・実証を重視する考え方で操作主義と訳される。科学的概念の意味は一群の操作(オペレーション)によって与えられると主張する。経験的・具体的な操作・手法によって規定されることのできない概念は無意味であると説く。彼の操作主義は“測定できないものは科学ではない” が基本となっている。彼は、制御可能な操作(経験的具体的手法で規定できる概念)と科学とを強く結び付け、これが特殊相対性理論における同時性や長さの概念の解釈にも用いられたという。
面白いのは、彼は量子力学に批判的な立場であったにも拘らず彼の操作主義が量子力学の理解を助けたといわれている。しかし不確定性原理の出現により操作そのものに不確定性が生ずることが明らかになって、彼の考え方も修正が求められた。彼の考え方はアメリカの科学思想の礎となり、理論物理学入門(岩波書店)やスレーター行列式で有名なスレーター、原子爆弾を開発したオッペンハイマーもブリッジマンの操作主義を受け継いでいる。この点において優れた科学思想がその一方で原子爆弾を生み出したと言えなくもないだろうか?