トラ技1月号の付録2022年12月16日

発売中のトランジスタ技術2023年1月号にトランジスタ技術創刊号の復刻版が付録で付いた。創刊号は1964年10月号で私が中学生の頃だった。当時もトランジスタ技術の発行は知っていたが中学生のためトラ技まで購入できず本屋で立ち読みする程度だった。CQ出版はたまに創刊号の復刻をやる。CQ誌では1965年9月号にCQ誌創刊号がとじ込み付録で付いたのを覚えている。CQ創刊号は昭和21年頃発行でハムの草分け達が執筆していて内容も興味深く面白かった。この復刻版は今も家に保存されていると思う。
さて、トランジスタ技術創刊号だが完全復刻で内容はCQ誌のトランジスタ版のようにアマ無線関連の記事が多い。執筆者も大蔵恭仁夫氏、中西利通夫氏、奥澤清吉氏、杉本哲氏、江崎昌男氏、金平隆氏などの当時良く目にした先輩アマチュア無線家達の名前が並んでいる。製作記事では例えば50MHzの12石AMトランシーバが中々の力作。送信部は水晶発振で50.3MHz固定、入力1W程度。受信部はダブルスーパーというオーソドックスな構成だが写真を見るとコンパクトで良くまとまっている。変調回路は送信部2ステージの終段コレクタ変調と同時に発振段にも変調信号を整流して正側変調電圧を加えることで歪を少なくするという工夫をしているのも興味深い。受信部は今では使われていないゲルマニウムトランジスタで構成されている。そのほかの記事も初心者向けで、当時のラジオの製作や初歩のラジオと非常によく似た郷愁を感じる内容になっている。広告も懐かしい会社のものばかりで、アルプスやミツミ、トヨムラ、DELICA、山水トランス、リーダーなどのパーツや測定器の当時の広告を再び見ることができて感激した。当時のトラ技の販売価格は150円でCQ誌と同じ価格だった。勿体ないので少しずつ読んでいる。

バカの災厄2022年12月01日

池田清彦著:宝島社新書。頭が悪いとはどういうことか?著者が述べるバカとは自分の思考概念こそが正しくて他人も同じことを考えなければおかしいと考える人のこと。つまり自分が考える正義は絶対に正しく、他の人も同じ正義を信じなければならないと思い込んでいる人のことである。著者によれば人間は別のものを同じとみなす「概念化」と呼ぶ能力を持っている。例えば人は名前と本人とが同一であるという概念を自然に持っている。考えてみればリンゴが3つあるのもミカンが3つあるのも夫々は別の果物なのに同じ3つと捉えられる。この数の概念のおかげで数学が発達したというのをどこかで聞いた覚えがある。この概念化能力こそ人間を人間たらしめている知性の根源とも言えそうだが、もともとは抽象化して考えるいいかげんなやり方から始まっている。概念はこのいい加減さから生まれたものだが、これが絶対正しいと考えた時に色々な問題が生じてくる。
この社会や世界には色々な考え方があるのにバカは特定の考え方だけが絶対的に正しいと信じ込み、正しくて確かなものと思い込む。そうして自分の正義を主張することになると著者は言う。私も過去にそのような傾向はあったので読みながら反省した。振り返れば何度も間違う経験を積む中で自分の考えの浅さを認識し、違う考え方も多少は受け容れられるようになってきたかなというところか。そもそも絶対的に正しいことなどこの世の中には存在しない。科学的知見も時代を経て変わっていく。人間の考えなど元々いい加減なものなのだと認識すれば自分の正義に拘ることも無くなってくるというのが本書の主張。自分の考えの正しさに固執せず、多様な考え方に目を向けよと述べている。本書も後半には著者自身が固定概念に縛られているのではないかと思われるような所もあったが概ね面白く読めた。

マンスターズ2022年11月21日

CQ誌を本屋で立ち読みしていたら懐かしいマンスターズの記事があった。マンスターズはアメリカのTVドラマで1960年代に日本でも放送された。怪物一家のコメディで、日本でもかなり人気のあるドラマだった。主人公のハーマン・マンスターは吹替が若山弦蔵だったと思う。ハーマンはアマチュア無線家でもあり、大きな真空管の載った無線機が印象的だった。覚えているのは火星の宇宙船と交信する話だったと思うが、実は相手は火星人ではなく子供のいたずらでだまされた話だったような気がする。60年代はアメリカでもアマチュア無線はポピュラーだったが太陽活動的にはサイクル19が終わってミニマムになり、サイクル20がスタートした頃だった。サイクル20のスタート以降はカリフォルニアなどから沢山のハムの信号が入感するようになり、私のAM電話10Wでも交信できて感激した。

(画像はWeb上で見つけたハーマンのQSL)

無線設備の変更申請をする2022年11月14日

このところずっと無線機いじりに没頭していた。
少し前、第一送信機のFT1021Xの終段MRF422がFT8の200W連続運用により破損したが、交換用のトランジスタMRF422の入手は困難でFT1021Xの修復を諦め処分した。このままでは局免許の維持もできなくなるので代わりの200W機を探したが、今の市販品は限られておりどれも一長一短があって自分の気に入るものがない。自分がポンコツのせいか金を出せば買える最新鋭機にあまり魅力を感じなくなった事もあるが、実用上の懸念点もある。特に真夏にソリッドステートの200W機をFT8のフルパワー連続で使うのはFT1021Xの経験からも心配があるが、冷却設計が十分と思われる機種は筐体が巨大で置く場所がない。妥当なサイズのものは冷却が心もとない。1kWの設備申請をすればいいのだが自宅の環境制限やTVIや検査の面倒さを考えると及び腰になるし、細々とやれればいいので200W程度の設備で十分である。色々考えた結果予備の古い小型の無線機IC721にブースターアンプを付加することでFT8の200W安定運用を狙ってみようと思い至った。
ブースターアンプとしてジャンクのFL2100Zが使えそうだが、これは元来500Wを出せるアンプであってそのままでは局免許の認定審査に通らない。しかも古い機械で、電源をオンすると凄い音とともに火花放電を起こした。調べてみるとどうやら長い期間通電されていなかったため真空管572Bが寄生発振を起こすようだ。572Bは海外の文献などによれば長く使わないと増幅度が上がって非常に発振しやすい不安定な球らしい。このためVHFの寄生発振を起こして異常なプレート電流/グリッド電流が流れ、グリッドのパラ止め用抵抗が一瞬で焼損するほどだ。電源を入れたときの爆発音はこのせいだった。発振しないようグリッドバイアスを上げてエージングをしてみたが真空管自体は頑丈で破損していない様子。電源部も特に問題なさそうなので再生を試みた。陽極電圧を下げることで572Bの利得が下がり、発振限界を下回って安定に動作することが確かめられた。572Bは許容陽極損失が160W程度しかなく、2本でも300W程度なので元々500Wの出力を出すのは無理がある。SSBならpepで500Wは可能だがFT8となるとほぼ連続動作なので効率50%と仮定すると、連続出力200Wを得るのに400Wの入力になり陽極損失が最低限200W必要となる。これに30%程度の余裕を考えると許容陽極損失290Wは必要となり、572B2本が妥当と考えられる。572B一本なら簡単に認定されるという話もあるがFT8を考えれば2本使わないとまともな耐久性が得られないだろう。
以上から、572B2本の陽極電圧を下げて軽く使えばFT8の連続200W出力でも安定性と耐久性が持たせられる。しかも入手の難しくなっている球の寿命を延ばすためにも良い。このためIC721をエキサイターとし、572B2本を励振する構成で定格出力200Wの送信機を目指すことにした。ダミーロードと電力計で測定実験を繰り返した結果、終段管は572B2本のまま陽極電圧を1200Vにし、出力はALCでエキサイターにフィードバック制御をかけることで寄生発振を抑え、安定的に200Wを出せる見通しが得られた。
次は局免許の設備認証であるが、送信機系統図と実測データ及びアンプの200W化改造の内容詳細をまとめて変更申請書案とともに以前にも使った認証機関TSSに提出して設備保証審査を申し込んだ。数か所の指摘と対応修正があったが電子申請でのやり取りは迅速だった。TSSは審査に時間がかかるという話もあるがそんなことはなく、一週間ほどで申請通りの内容が認められて技術基準適合の保証書(PDF)がメールで送られてきた。これを変更申請書に添付して最終的に総通へ電子申請を行い、問題なく審査終了できた。無線局の免許申請は技適の通った無線機でないと非常に面倒そうだが意を決してやってみるとなんとかなるというのが結論。通すのがかなり難しそうな送信機系統図でも技術的な合理性とそれを裏付けるデータがあれば通すことは可能であると言える。

FT1021Xがついにご臨終2022年09月05日

8月18日に30年間愛用してきたFT1021Xが突然送信不能になった。調べてみると最大出力200Wのところが5W程度までしか出なくなっていた。このところ高温環境なのに最大出力でFT8の運用を続けていたのでさすがに使い方が過酷過ぎたようだ。故障発生の可能性が一番高いのは電力増幅ユニットである。ユニットを外して基板を目視した限りでは部品の焼損などは認められず特に異常な部分は観察できなかった。そこでまずは問題発生個所を切り分けるため、電力増幅ユニットの信号入力部を外してその前段からのドライブ電圧を測定すると47Ω負荷で最大0.5Vp程度ある。電力換算で約5mWになる。
一方送信電力増幅ユニットは終段MRF422プッシュプル、ドライバーMRF486プッシュプル、プリドライバー2SC2166の3段構成になっている。総合ゲインは30数dB~40dB程度予想されるので入力電力5mWは十分なのか不十分なのか微妙だ。メーカーのレベルダイヤグラムが手に入らないので電力増幅ユニットが悪いのかそれより前段が悪いのかこのままでは識別ができない。このため、電力増幅ユニットの入力部にQRPトランシーバFT817の14MHzSSB出力を注入してみることにした。FT817なら最小でも100mWくらいは楽に出せるので入力レベルとしては十分である。これで電力増幅ユニットが正常なら200Wの出力は得られる筈であるが、結果はやはり5W程度しか得られなかった。このことから電力増幅ユニットのトランジスタが破損している可能性が高いと考えられる。まずプリドライバー2SC2166は切り離してテスターで当たった結果異常なし。MRF422とMRF486は簡単に切り離せないので良否確認ができないがどちらかが破損している可能性が大きい。現在の状況はここまでであるが、最大出力での過酷な使用状況から考えると終段のMRF422破損と考えて良いだろう。モトローラの電力トランジスタMRF422はネットで調べてもどこも在庫ゼロで入手不可能な状況だった。もしあったとしても価格は暴騰していてペアで5万円はするだろうから手が出ない。長年愛用してきた機械だが修復は断念するしかなさそうだ。

ワクチン追加接種について2022年07月08日

65歳以上向けの4回目のワクチン接種案内が市役所より届いた。イスラエルでの4回接種結果はオミクロン株BA1に対して60歳以上では感染防止効果が接種直後で2倍。しかし50日経過以降では効果がほぼゼロとなる。一方重症化防止効果は40日後で4倍。2か月後で3倍と効果が持続している。高齢者の重症化を防止するために政府は4回目の接種を決めた。
現在感染者の増加が始まっており、予測では8月中旬には第7波で東京でも1万3千人/日以上の感染者数が見込まれる。このためにも高齢者の4回目接種を急ぐという姿勢のようだが、第7波はオミクロンのBA5という変異株に置き換わっている。BA5は抗体をすり抜ける力が強いため感染力が高く、ワクチンの効果はさらに弱まってBA1への効果の3分の一程度らしい。第6波はBA1や2によるものであり、第7波はBA5が主体になると見られる。このような状況で効果の薄い4回目接種をする意味が本当にあるのか?むしろ頻繁なブースター接種の繰り返しによる免疫系への弊害が心配になる。
なぜ行政が高齢者に4回目接種を進めるのかの真意について考えてみた。
1. 重症化抑制・・・これは一応納得できる理由である。
2. ワクチンを購入し過ぎて捨てるのは問題になるのでどんどん使ってしまおう
3. 行政がコロナ対策を真面目にやっている感を示すため
4. 高齢者なら免疫系に異常が出ても構わないし高齢人口を減らす効果がある
5. RNAワクチンの連続接種の影響についてデータ取得したい
等々、1以外は穿った見方になるがいずれにしても同じワクチンを何回も打ってそう効果が続くはずもないだろう。一方接種を繰り返すことによる弊害はどうしても増加して行く。この辺でワクチン接種継続の是非について立ち止まって考えてみたいところだが、第7波はもう始まっていて避けようがない。少しでも重症化を抑制できるならここは素直に接種をしておくべきか悩みどころである。

ダスト18(手塚治虫)2022年06月21日

表題の漫画(発行:立東舎)を読んでみた。設定が映画ファイナルデスティネーションとそっくりだったので最初は映画からヒントを得た漫画なのだろうと思った。ダスト18では飛行機事故で亡くなるはずだった18人が生命の石で生き残った。しかし死ぬ運命に決められていたものが生き延びることは許されないと運命を操る神?の手が生き残った人々の命を奪おうとする。一方、映画ファイナルデスティネーションは飛行機事故を予知して回避した若者たちが逃れられない死の運命にさらされる。どちらも人間の寿命は決まっていて変えることは許されないという運命論的死生観に基づいている。 
映画の公開年を調べたら2000年で原作は無いようだ。 漫画のダスト18はそれより28年前の1972年に少年サンデーに連載された。従ってダスト18は映画の真似ではなく手塚治虫のオリジナルストーリーと判断できる。どちらかと言えば映画の方がダスト18をヒントにした可能性もあって手塚治虫の先見性と天才性を物語っている。まあ、落語の死神でも同じような死生観が語られるからこのような考え方は独立的に発想されるのかもしれないが。ダスト18の巻末にも映画との類似性については述べられており偶然的に一致したと判断されているようだ。解説によればこの漫画は不人気なため予定よりも早く打ち切られてしまった。当時は全共闘の学生好みの劇画が流行っていた頃で手塚を含む多くの漫画家にとって不遇な時代だったという。手塚作品には命を題材にしたものが多く、手塚治虫は一貫して生と死について描き続けてきたと言えるだろう。本作はそんな手塚作品の中で埋もれていた秀作の一つである。

スマホの電池消費量増大と対策2022年05月16日

楽天回線でoppoのA73スマホを使い始めた当初から電池消費量が気になってデータを取り続けた。スマホはあまり使わずスタンバイ状態のままが多いので特にスタンバイ状態での電池消費を気にかけている。(以降は全てほぼスタンバイ状態のままでの電池消費率を記す)
当初の標準的なスマホ設定での電池消費率は11~12%/day。但し一日中一定しているわけではなく、スタンバイ中でもバックグラウンド通信をしていたり不規則な作動もするので電池消費量はいつも変動をしている。それでも日単位で見ていれば条件が変わらない限りほぼ平均的一定値に収斂する傾向がある。しかし4月半ば頃突然に電池消費が急増し、30%~40%/dayくらいの速さで電池消費をするようになってしまった。色々設定を変えてみたり、他のスマホに機種変更してみたが変化はなかった。機内モードにした時だけ殆ど電池を食わない状態に回復するので基地局からの電波状況による可能性が高いと考えられた。電界強度は以前だと-90dBm位あったものが-105dBm以下になっている。スマホは基地局からの電波の強度に応じて送信出力を自動調整するから、基地局からの電波が弱くなればそれに応じて自分の出力を上げて電池消費が増大する。ある日を境に電池消費率が3倍にも増えたのは基地局からの電波が何等かの原因で弱くなったからと推定された。この時期での変化は2つあって、一つは楽天回線のカバーエリア不足を補うためのauのパートナー回線が停止しつつあったこと。もう一つは別方向に新しく基地局ができて稼働を始めたこと。前者は800MHz帯の回折しやすい特性を持っていて家の中などで楽天の電波が弱い場合に補助効果を持つからこれを停止すれば圏外になる可能性がある。後者は基地局の配置条件の変化に伴い放射強度を調整することでこれまで問題なかったエリアに影響して場所によっては電界強度が大きく低下するケースも考えられる。結局楽天に問い合わせてみると原因特定や対策は時間がかかるのでドコモのsimを内蔵した代替機を貸してくれた。これは全く問題なく快適に動作するのだが、いつまで使用可能なのかわからないし電話番号が別の新しい番号のため使いにくく、結局あまり使っていない。
従来の自分の番号のスマホをどうにか使えないだろうかと電池の消費要因を更に調べてみた。結局電池を一番食うのはVoLTE(標準電話)で常に基地局と通信していることにより電力消費が大きい。次に色々なアプリがバックグラウンドで通信することによる。だから機内モードにすればVoLTEもモバイル通信も止まるので電池消費は収まる。そこで家の中だけでも4GLTEを使うのをやめて自宅のwifiで代用することを試みた。この場合VoLTEは使えなくなるが楽天はLINKというIP電話がwifiでも不十分ながら使える。不十分の意味は、wifiだと基本的に番号通知がされない点にある。しかし着信の場合は自分の電話帳に登録された相手からの電話なら相手の名前が通知されるのであまり問題はない。問題は発信する場合で、こちらの番号は表示されないため怪しまれて電話を取ってくれない致命欠点がある。だがこれは自分から電話を掛ける場合のみモバイルデータ通信をオンすればLINK電話からでも番号通知されるので問題にはならない。あとは肝心な機内モードでwifiのみ常時オン状態の場合の電池消費率だが、これは概略6%~10%/day程度に収まっていることが確認できた。つまりwifiの常時動作による消費電力のほうがモバイル回線接続よりもずっと電池消費率が少ない。特にwifiは家の中では電界強度も強いため常に低電力での接続が期待できる。もちろん基地局からの電波が強いエリアならwifiと比べても消費電力は大差ないだろうが、我が家のように基地局から離れた悪い条件下ではwifiを使うほうが圧倒的に有利である。外に出るときは自宅のwifiは使えないのでモバイルデータ通信をオンする必要があるが、楽天の電波は回折性が低いために家の中では弱くても外に出れば強くなり問題は少ない。以上からwifiで補間することで対策になりそうだ。
このように苦労の多い楽天をなぜ使うのかと言われれば、それは安いこともあるが、問題のあるものほど調べてみたり対策を考えたりと興味が尽きないからである。

スバル3602022年05月09日

昔、我が家の合い向かいに富士重工伊勢崎製作所第二工場という大きな工場があった。昭和30年代初頭にその敷地の一角にあった実験室でスバル360の開発が行われた。私がそのことを知ったのは随分後の話で当時は近所の人達さえも誰も知らなかったろう。開発は随分苦労したようで例えばトーションバーが疲労破壊して材料や熱処理の変更を行いながら何度も何度も耐久試験を繰り返したなどの話を聞いたことがある。スバル360の開発拠点がなぜ伊勢崎だったのか?これは私の想像だが伊勢崎市には板垣サンライトという当時は有名な自転車オートバイの製造会社があった。自転車オートバイというのは自転車に小さな2サイクルガソリンエンジンを取り付けて回転軸を自転車後輪のタイヤに押し付けることで摩擦により動力を伝達する原始的な原動機付き自転車だった。板垣サンライトは日本有数の自転車オートバイメーカーであったがやがて本田技研などに追い抜かれて経営不振に陥り倒産した。しかし板垣には優秀なオートバイの設計開発技術者が多く居て彼らは他の企業に移り、その後も活躍した。その中で富士重工に移った人たちが伊勢崎第2工場でスバル360の研究開発に携わり、伝承された板垣の技術が開発成功を導く要因になったと考えられる。私も小学生の頃、板垣の自転車用エンジンの中古品を手に入れて毎日分解組立して遊んだ思い出がある。
その富士重工伊勢崎第2工場も今は無く、跡地がスーパーマーケットに転用されている。そこの片隅にスバル360開発拠点であったことを記したモニュメントが残っており、上の画像がそれである。

寄生励振アンテナ2022年05月07日

最近、ある局と交信したらアンテナは別のバンドのロータリーダイポールの近傍に平行にエレメントを置いただけの無給電の寄生エレメントのアンテナという話だった。あれ?と思ってさらに話を聞いたら別の局から教わった面白い方法で珍しいでしょう?と説明してくれた。実はこのタイプのアンテナは私が昔実験したことがある。クリエートの214Aという14/21MHzの2バンド用八木アンテナを使っていた時に28MHZバンドに簡易的に出られるようなアンテナを付加したいと思った。そこで28MHzに共振するエレメントを214Aのラジエータエレメントの近傍に設置して誘導により給電できないだろうかと考えた。近接させた28MHzのエレメントの距離や長さを調節するとうまく28MHzに共振し、誘導のみで給電することができて28MHzバンドまで使うことに成功。この方法はオリジナルがあって、ハイゲイン社のExplorerというアンテナで使われていた。しかしExplorlerは元のラジエータエレメントの両サイドに計2本の寄生励振エレメントを配置する構造だった。これはさらに古い文献を調べるとスタンフォードのJ.T.Bolljahnが1950年にUS特許を取得したOpenSleeveMonopoleが原典のようだ。ダイポールアンテナの外側に接触しないよう中空のパイプを通して同軸状に形成し、ダイポールからの誘導で非接触給電させるもの。この中空パイプを2本のエレメントに置き換えたものがハイゲインのExplorer。私が考えたものは寄生励振エレメントを2本ではなく1本に簡素化したもの。1本のエレメントでも問題なく寄生励振ができることが分かったが、1本の寄生エレメントによる方法はそれまで発表された事例はなく、この点に関しては一応の独自性があるだろうと考えている。この、一本の寄生エレメントによるバンド拡張法実験は34年前のCQ誌1988年10月号に寄稿したが、その後クリエート社のVダイポールに50MHzバンドを付加するのにこれと同じ方法が用いられるようになった。
昔行ったささやかな実験が今もアマチュアの間で使われていることを今回たまたまの交信で知って少し嬉しかった。(写真は1988年に実験した寄生励振アンテナ:214A八木アンテナのラジエータエレメントに近接して平行な別の寄生エレメントを配置した様子)