電気自動車2019年09月29日

資源枯渇、大気汚染、温暖化などの環境破壊の大きな原因となっているのが自動車である。それは殆どの自動車が化石燃料をエネルギー源とする内燃機関によって動くことによる。そこで未来の車として電気自動車が脚光を浴びている。電気自動車は実は内燃機関自動車より以前からあった。それ自体は何の難しさもない概念だが難点は電池だった。当初はバスなどに用いられたが当時の鉛蓄電池では航続距離が圧倒的に不足して電動バスは早期に消えた。その後も鉛蓄電池を用いた電気自動車は何度も現れては消え、近年になってリチウムイオン電池により航続距離も伸びるようになり、将来への希望も見えてきた。しかし、電池の進歩を見ているとまだまだ実用化には遠い気がする。素人があまりネガティブなことを言いたくはないが、電気自動車に未来は本当にあるのだろうか?そもそも電気自動車には燃料電池の実用化が必須だった筈。私が小学生の頃読んだ「子供の科学」に、実用化間近な燃料電池として解説記事があったのを覚えている。あれから60年も過ぎて燃料電池は今なお普及もしていない。リチウムイオン電池は優れた充電池であるが、それではまだ電気自動車の課題を解決できない。電気自動車は走っている途中でいつ電池切れになるかという重大な不安を抱えている。そして充電に必要な時間もまだ長い。確かに新車のうちは結構な航続距離が達成できるだろうが、充放電を繰り返すうちに電池は急速に劣化し、車の航続距離もみるみる減少して車としての実用性を失う。そのうえ電池のコストはべらぼうに高いためそう頻繁に交換はできない。さらに電気自動車では内燃機関のような熱源がないため、冬季の暖房はヒートポンプシステムを使わざるを得ない。ヒートポンプは外気から熱をくみ上げる逆カルノーサイクルだが、外気温と内気温との差が大きいほどカルノーサイクルの効率は低下する。このため少しでも成績係数(COP)を高くできる二酸化炭素を冷媒にしたサイクルを用いるがこれにしても寒冷地では効率が低下する。このヒートポンプは電気で動く圧縮機を用いるため相当な電気を食い、航続距離をさらに低減させる要因となる。夏季の冷房についても熱交換が逆転するだけで、空調には大きな電力が消費される。航続距離の低下により、犯罪者を追いかけていた米国の電動パトカーが途中で電池切れで動けなくなるなどの笑えるトラブルも起きている。今のまま電気自動車が普及すれば各地で毎日電池切れレスキュー出動騒ぎが繰り返されるだろう。生命に関わる問題も生じるかもしれない。今のところ電池の問題を解決できるのはエンジン発電機を積んだハイブリッド車しかない。しかしこれはあくまでもガソリンを使う車であり電気自動車ではない。電気自動車に対し悲観的なことを書いたが否定しているわけではなく、ガソリン車と置き換わってくれることを切望している。そのためにはまだ相当高い壁を乗り越えなければならず、その方法がまだ見えないように思えるのである。