珍しく無線局の訪問者あり2022年03月15日

昔はアマチュア無線をやっているとアンテナの立っている知らない家に突然訪問したりされたりという機会が多かった。無線に興味を持つ中高校生が教わるために訪問することもあったし、見知らぬ同士でも平気で訪問して親しくなることもあった。それが楽しみの一つでもあった。しかし時代は移り変わって社会の習慣も変わり、そのような積極的行動は皆無になってしまった。さらに近年はコロナ禍もあり、家への来訪者も殆ど無くなって気楽な引きこもり生活を楽しんでいる。
今日も寝間着のまま家でゴロゴロしていると珍しい訪問者があった。ドアを開けると50数年前に無線で交信した者ですと言う。直接会った事はない人の突然の訪問に驚いたが、話してみると同じ市内に住んでいて無線は長い間やめたままだったとのこと。最近またアマ無線を再開したそうで、昔交換した交信カードを見ていて懐かしくて訪問したということだった。色々な昔話や同時期に良く交信した人達の話、自作の無線機を引っ張り出しての講釈などが弾んで楽しい時間を過ごした。今や絶滅危惧種のアマ無線ではあるが、同じ市内でもアマ無線をやっている局はまだ少なからず居る。だが昨今はそれぞれ知り合い同士の輪の中で閉じる傾向が強まり、もはやそれ以外とは殆ど交流はないのが普通になってきている。そういう閉じた世界は好きではないので現今のアマ無線界とはすっかり疎遠になってしまった。しかしそれでもたまにはこういうことがあるので無線趣味も悪くない。

帯域幅可変フィルタの着想2022年03月22日

昔アマチュア無線に夢中だった高校生の頃(1966年頃)、SSB(SingleSideBand:単側波帯)の通信方式に非常な興味を持っていた。当時アマチュア無線でもSSB方式による通信はまだそれほど多くなく、アマチュアにとって格好の技術課題だった。学校でも授業など聞かず回路のことばかり考えていた。ある時ヘテロダイン方式の周波数変換回路を色々考えていて帯域幅を可変にする方法を思いついた。第1中間周波数f1の第1フィルタの後に周波数変換回路を設けて局部発振周波数f2を混合してf1-f2の第2中間周波数を得る。この第2中間周波数を第2フィルタに通すことで第1フィルタと第2フィルタの合成フィルタが実現できる。この時、局部発振周波数f2を可変にしてやることで第1フィルタと第2フィルタの通過帯域をずらすことが可能となり、帯域幅を任意に変化可能となる。具体的には例えば第1中間周波数2MHzで帯域幅3kHzの第1フィルタと第2中間周波数455kHzで帯域幅3kHzの第2フィルタを組み合わせる。この時、局部発振周波数f2を1545kHzにすれば2つのフィルタで合成された帯域幅3kHzの2段フィルタとなる。そして局部発振周波数f2を2.5kHzほどずらせて1547.5kHzにしてやれば帯域幅は0.5kHzに縮小できる。つまりf2を1545~1547.5kHzの間で可変にすれば帯域幅を3kHzから0.5kHzの間で連続的に任意の帯域幅にすることが可能となる。当時読んでいた無線技術誌や専門書やメーカー製品の中ではそのような回路は見つけられなかったので十分独自性があるだろうと悦に入っていた。特許出願をしてみたいと思ったが当時はその方法もわからずメモに書いたまま埋もれた。
その10年位後に同様な方式を搭載する2段フィルタのSSBトランシーバのメーカー製品を見るようになった。果たして自分の考えた2段フィルタ方式の方が技術的に早かったのかどうかは判らない。電子回路は基本コンセプトとしては製品化よりずっと前に存在する可能性が高いし、以上述べたような可変フィルタは回路を考えていけば誰でも着想できる可能性がある。しかし其の頃はもしかしたら自分の着想のほうが早かったのではないかという思いに囚われた。その当時特許出願していれば先行技術にどんなものがあったのかが明確に分かり、得心することが可能だったろう。
結果に関わらず自分の気持ちが納得できるような客観的判定がされることはその人の人生にとっても有益であろうと思われる。