ダイオードクリッパーの実験2023年03月27日

現在使用しているHFトランシーバーはIC721という古い物。これはシンプルな点は良いのだが、スピーチプロセッサーさえ無くてトークパワーが低いという弱点がある。音声の波形は複雑で、そのまま送信機に入れると非常に低い平均出力しか得られない。このため音声の尖頭部を切って平均化するスピーチプロセッサーが必要になる。これを簡易的に行う方法として、ゲルマニウムダイオードの順方向特性を使うスピーチクリッパーがある。
ゲルマニウムダイオードに順方向の電圧を印加すると約0.2V以上の電圧で急激に電流がながれ始め、それ以下ではほとんど流れない。この流れ始める電圧を順方向電圧と呼ぶ。この順方向電圧を利用してダイオードを互いに逆向きに並列接続し、音声増幅回路の途中に入れてやれば順方向電圧で音声信号波形の頭がクリップされるので信号の平均値upが期待できる。問題はクリップするレベルで、例えば正弦波の頭を切れば波形が歪むから、信号の歪率が増加してうまくない。結局歪の増加と平均出力の増加との兼ね合いで適度なレベルを選ぶことになる。
実際にどんな特性になるのかを把握するために手持ちのゲルマニウムダイオード1N34Aの順方向特性を予備実験的に測定してみた。結果は次の通り。
順方向電圧Volt, 順方向電流 mA
0.142, 0.07
0.16, 0.1
0.18, 0.15
0.25, 0.46
0.3, 0.9
この特性を回帰式Y=A・X^R (Y:電流mA、A:係数、X:電圧Volt、R:次数)
に乗るよう最小2乗法計算して係数A、Rを求めてみた。結果は
A=54.637 R=3.42で4%以内位の回帰誤差に収めることができた。
このダイオードの特性はY=54.637・X^3.42 で概略表せることになる。

結局電流は電圧の3.42乗に比例するという結果が得られた。次数3.42はかなり急峻で歪も相当増えそうだが、試しにIC721のマイクアンプ部分の200mV程度の信号電圧の部分に1N34A2本を逆方向並列接続したものを挿入してみた。結果はある程度の音声信号レベル平均化ができてトークパワーが上がったように見えるが歪もだいぶ増加するという状況。