職人の技2019年02月22日

宮大工の棟梁で有名な西岡常一という人がいた。学者との中世建造物の屋根構造について論争し、自ら、屋根を組み上げてみせて正しさを証明したことは有名である。このように、理論先行の学者は技術的洞察力においても現場でたたき上げた職人に敵わないことがある。宮大工の西岡棟梁は自分の目とこれまでの経験を通して洞察する。そして建てるときの設計図ではなく、建てて時代が過ぎたあとの姿を見通して創り上げる。即ち直観で建造物の姿形の本質を見通したアプローチを行なう。宮大工の仕事は最初に全ての設計が確定しているやりかたではなく、大まかな構想に基づいて開始し、作りながら修正し、目標に近づけるやりかたである。そのように行動することで誤差の範囲は自ずから狭まっていく。これはトップダウン的に管理することと異なり、帰納的であり、試行錯誤のアプローチであるともいえる。
管理優先の仕事のやりかたの中では、試行錯誤は望ましくないものとされやすい。しかし、考えぬきながらの試行錯誤こそは誤差の広がりを防いで目標に近付くための有益な手段なのである。宮大工が使う木材は原木を割って形成する。だからあらかじめ設計された図面とは合いようがない。我々の仕事とて同様であり、あらかじめ決めたように進むことは殆ど無いと言ってよい。だから、実際の仕事のやりかたというのは目論んだ通りにはいかず、多かれ少なかれ試行錯誤なのであり、
この中で目標に近づけようと考え抜き、試し、努力するものだろう。

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