今回の太陽フレアの影響2021年11月02日

10月29日の日本時間0時35分に太陽面中央南の黒点群2887で強度X1.0の太陽フレアが発生した。フレア現象に伴ってコロナガスと高エネルギー粒子が放出されて太陽風となる。太陽風は粒子が質量を持つので速度が遅く2~3日で地球に到達して地球の磁力線の影響で南北極に集束する。これにより地球磁場の擾乱が発生して電離層を介した短波帯の無線通信に影響を与える。理屈的には太陽風の磁場の向きが地球の元々の磁場を弱めるように働くと極に近い高緯度地方での電離層F層の電子密度が低下してこれが段々中緯度にまで及ぶ。このため短波帯では高い周波数ほど伝播しにくくなるがこれを磁気嵐と呼ぶ。
地磁気の擾乱度合はK-indexという3時間毎の指数で表される。画像は茨城県にある柿岡地磁気観測所のK-indexデータ(日時はGMT)。これを見ると10月31日12-15時GMT(日本時間の21-24時)にK-indexがピークのK=5(マイナーストーム)だがその前後はK=3以下の静穏状態を維持しているのが判る。10月30、31日はアマ無線の全世界のコンテスト(WorldWideDXContest)があり、今年のハイバンドは磁気嵐でだめかと諦めていた。だが蓋を開けてみたら意外にも短波帯で最も高い周波数の28MHzバンドまで伝播が良好だった。これはK-indexの観測データとも一致していて地磁気はほぼ静穏状態が続いたことによると考えられる。Xクラスの太陽フレアとは言ってもX1.0は強度的には下限にあり、それほど深刻なレベルではないのと、フレア発生部が太陽の南下部であったため地球に到達する粒子密度が思ったより低めだったせいかもしれない。

送信電力の低減2021年11月16日

今夜寝床で聞いていたNHKラジオ第一放送で午前1時になる時に送信電力低減のアナウンスがあった。いつもは「放送設備の点検・整備のため午前1時から午前5時までの間出力300kWから200kWに落として放送します」というのが聞き慣れたメッセージだった。この程度の減力だと変化は全く感じ取れない。ところが今日は「出力300kWから10kWに減力します」という内容で、一瞬間違いではないかと思った。しかし減力後の信号は確実に弱くなり、ノイズも混じるようになったので10kWは間違いではないようだ。これは点検・整備のためとは言っているが資源保護のための省エネルギー化の実験も兼ねているのではないかと思う。300kWから10kWだとエネルギー量で30分の一となる。電界強度では5分の一以下くらいだろうか。出力をこれほど下げてもまだ十分聞き取れることが分かって面白い経験ができた。大昔のNHKはたしか500kWくらいまで出していたことがあったと思う。そのころは手作りゲルマニウムラジオでも十分な音量で聞こえたが今ならどうだろうか。
アマチュア無線でもより低電力での交信は推奨されている。無線運用規則にも「無線業務を満足に行うために必要な最小限の電力を輻射すること」と謳われている。昔の無線業務日誌を見ると1984年に自作の50MHzSSB用トランスバータで実験的に50mW程度の出力で運用したのが自己最小出力のようだ。ログによればこの50mW出力で当時10局程度と交信している。中でもJJ1IPB/1とは相手側も250mWという小出力同士で信号レポートhis59/my51、また静岡県の移動局JP1EQO/2とも59/41で交信ができている。大きい出力なら当たり前の話なのだが低出力で交信ができるとわくわくしたものだ。

アンテナの工事2021年11月23日

3年ほど前に取り付けた7MHzバンド用のロータリーダイポールアンテナを解体撤去した。
昔開局した時は7MHzバンドから始めたので思い出深いバンドなのだが、近年は自分の求める交信の姿とは遠くなった気がして全く使わなくなった。使わない物を単に設置し続けたくないと、穏やかな秋の日の先日に思い切って解体工事した。長さ11mほどのパイプなのでそれほど困難な作業ではないと思ったが、体力が落ちているせいか一人では思いのほか大変で全作業には半日ほど費やした。分解している時に気付いたのだが、パイプの中に1cm程度の小石が沢山入っていた。これは3年前に組付けした際に砂利の上で作業したため入り込んでしまったもの。特に影響はないだろうと思っていたが間違いだったかもしれない。このアンテナはもっと以前に使っていたことがあり、その時と比べて雨による共振周波数の変化がかなり大きくなったのが不思議だった。今回この小石を見て、その原因に思い当たった。恐らく、パイプの中に沢山入った小石は短縮コイル付近に停留し、パイプ内の水はけを悪くした。これにより雨が降った時の短縮コイルへの水による影響が顕著になって共振周波数が大きくずれるようになったのではないか? これを確かめるためには小石を取り除いた状態でもう一度上げてみる必要があるが、それほどの気力はないので確かめきれてはいない。
今回撤去の結果、鉄塔の上のアンテナは14~28MHz5バンド用の3エレ八木アンテナ一本だけになった。見た目はシンプルでスッキリとしたし、出られるバンドもよく使うものに絞られた。太陽活動も活発になってきているので今後はこれらのHFハイバンドに集中して行きたい。久しぶりの作業で筋肉痛が酷かったが中々取り掛かれないでいたことをやっと実行できて満足している。