電波障害2020年01月25日

アマチュア無線において昔から悩みの種は電波障害である。以前のテレビ放送はアナログ信号によるものであったため、電磁波による障害を受けやすかった。アマチュア無線の電波は送信する側の電波の質をどんなに向上させても直接テレビやオーディオ機器に飛び込むものがあり、送信側の対策のみでは解決は困難だったため、アマチュア無線の運用を諦めて閉局した人も多かった。しかし近年はテレビがデジタル放送になったため電波障害の問題は激減した。これに加え、多くのオーディオ機器等でも高周波に対する侵入阻止やバイパス処置がきちんと行われるようになり、機器のイミュニティ自体も向上している。また送信側でもフェライトコアなどが普及し、アンテナへの給電線から高周波が漏れる所謂コモンモード障害の対策が当たり前になった。これらにより、近年は短波帯などの無線による電波障害の問題は激減した。しかし、テレビなどの電波を受ける機器以外の家電機器などではまだ問題を生ずることもある。この問題に大きく関係するのが送信される電波の振幅変化である。高周波の振幅を変化させるSSBやAMなどの振幅変調モードや高周波を断続する電信モードでは、その振幅の変化が受ける機器側の非線形性によって検波され、機器に障害を生ずる恐れが残っている。これによってスピーカーから音が出たり、機器を誤動作させることがある。本来は受ける側のイミュニティ対策もしっかりすべきなのだが、日本の基準では欧州などに比べてこのイミュニティ基準がまだまだ甘い。
それでは送信側では何の打つ手もないのだろうか?一つ有効な方法がある。先に述べたように障害を与える主要因は高周波そのものというより高周波を振幅変化させている点が大きい。FM(周波数変調)ではこの振幅変化が原理的に無いため、受ける側の回路に非線形部分があっても何も検波されない。つまり高周波を受けても復調されない。FMはこのように電波障害に有利な側面を持つ。昔50MHzバンドでオーディオアンプに侵入する障害に悩み、変調をAMからFMに変えて対処した経験がある。現在はデジタル信号による通信も普及してきた。例えばFT8というモードは基本的にはFMであるため、電波障害を生じにくいという強みを持つ。その上弱い信号でもS/Nの点で有利な狭帯域通信であるため遠方との交信に向いている。まだまだ機器のイミュニティが十分でない現状において、このような電波障害を生じにくいモードはアマチュア無線における救世主とも言えるだろう。

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