フィボナッチの兎2021年01月04日

正月はフィボナッチの兎(創元社刊)という本を読んだ。数に関する発見の歴史を易しくまとめた読み物である。表題のフィボナッチは1202年に興味深い数列を紹介した。一組のつがいの兎が生殖年齢に達するのは1か月後だ。その次の1か月後は2つがいになるというように増えるとする。問題は毎月末の兎のつがいの数はいくつになっているか?答えは1,1,2,3,5,8,13・・・という数列になる。この数列をしばらく見ていると、隣り合う2つの数を足したものが次の数となるように続いていることがわかる。これをフィボナッチ数列という。この数列は自然界での数の増加とよく合っている。例えば1辺の長さがフィボナッチ数列となる正方形群の辺を半径とした円を描いて並べると渦巻き(らせん)がひろがっていく。ピッチが一定のインボリュートらせんはスクロールコンプレッサなどに用いられるが、このフィボナッチのらせんはピッチが増加してゆくもので巻貝などの自然に存在するらせんがこれに対応する。この本では数学的発見はすべてフィボナッチの兎の数列のように先行するものの上に築かれて成長を続けるものとし、新しい発見の歴史を綴っている。その中のエピソードの一つとしてインド人の天才数学者ラマヌジャンの話も紹介されている。ラマヌジャンがイギリスで研究している時に病気になり入院した。見舞いにきたケンブリッジ大のハーディ教授は、「今乗ってきたタクシーのナンバーは1729だった。平凡な数字だけど」と言った。しかしラマヌジャンは「いいえ、とても興味深い数字です。2通りの3乗の数の和で表せる最小の数だから」と即座に返したという。実際のところハーディはそのことを承知でありながらラマヌジャンの退屈を紛らしそうな数字を挙げたのだろうけれど。そういうハーディの慧眼が大天才を発掘したと言えるか。

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