創造性について2019年06月26日

創造性の高い人とそうでない人はどこが違うのかという研究は色々行われてきた。米国のニュースウエブサイトQuartzの記事(以下のURL)
https://qz.com/584850/creative-peoples-brains-really-do-work-differently/  にこれまでのいくつかの研究結果が紹介されている。まず、これまでの予想に反して知能が創造的な思考に寄与する割合は少なく、IQの高さだけでは創造的な閃きを説明出来ない。創造性はむしろ知性や情緒、動機、道徳などの全般的な諸特性が関与する。そして創造的な人の共通点は心が開放的である。つまり複雑さや曖昧さを好み、不調和を許容し、混沌の中から秩序を見出す能力を持ち、自立的であり、特異で、リスクを取る。これは原始的かつ文化的、破壊的と建設的、狂気と健全さ、などの対極的な二面性が心に内在していることによる。創造的な作家には魅惑と困惑の相矛盾する二面があるが、奇妙なことに彼らにはまた心理面での健全性も認められる。なぜか?それは創造的な人は、より内省的であり、それにより自己認識を高め、自分の心の中にある暗い面や不快な面に親近感を抱く。それが理由で彼らは自己の暗い面と明るい面の全部を受容し、社会的病理にも対処できる能力が高い。むしろこのような傾向こそが彼らをより堅実にし、自己認識を深める。奔放自在に自己や世界に立ち向かうとき創造的な人は健全さと病的なふるまいが稀有な統合を成すと言える。 
一方、ある研究者は創造的な人の特徴は複雑性にあると言う。彼らは極めて個性的であり、それに対し一般人は協調的である。今日では多くの脳学者が創造性は多面的であり、ある意味滅茶苦茶であると考えている。創造性が片方の脳に宿るという右脳神話は誤りで、創造性は脳全体の働きによる。脳の想像ネットワークというものが創造性に重要な働きをする。人間はメンタルな生活の中で半分以上をこの想像ネットワークに費やしている。想像ネットワークは人の経験から形成される。その機能は3つに分けられる。それは個人的意味作り、思考シミュレーション、そして洞察である。これらによって自分たちの経験から概念の構築をする。過去を思い起こし、未来について考え、他人の考えを想像し、代替シナリオを考え、ストーリーを理解し、心や情緒に反映する。想像と実際の社会生活は脳のネットワークに共存し、自己認識を高める。しかし想像ネットワークはそれ自身のみでは働かず、脳の認知や記憶を司る上位ネットワークと複雑に絡み合ってダンスをしている。上位ネットワークは外部からの擾乱を遮断して内なる体験に同調させて、我々が想像に集中するのを助ける。創造的な脳はこれらのネットワークを自在に活性化・非活性化できる。これらの働きにより相矛盾する思考をうまく操ることができる。これにより経験していない新しい領域まで想像を広げられる。このような脳の想像ネットワークシステムと創造的二面性とによって常人では思いもかけないものを生み出す。以上のように創造的であることは狂気とも隣り合っているようだ。人は自分がより創造的でありたいと願うが、創造的であることは生きにくいことなのかもしれない。

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