扇風機が壊れた2025年07月01日

古い扇風機のスイッチを入れると暫くは動作しているが、突然停止するようになった。
もう廃棄した方が良いほど使い古した物だが、廃棄するのも新しいのを買いに行くのも面倒なので一応分解して調べてみた。

扇風機の回路など知らないしどういう動作なのかも分からなかったが、配線を追うとある程度は想像がついた。モーターからは4本の線が出ていて電子回路基板に繋がれていた。
茶色線が共通線で、青黄灰色の3本はそれぞれ高速、中速、低速の巻き線で、このうち一本を選ぶことでモーターが所定速度で回る。青黄灰の3線はトライアックに繋がっていて、トライアックの3つのゲート電圧を制御することで速度切替を行う。ゲート電圧の制御は1チップのマイクロコンピュータで行っているようだ。押しボタンスイッチがマイコン回路に繋がっていて、スイッチを押すとゲートが選択されてモーターがこれに応じた速度で回る。

不具合は恐らくトライアックかマイコンと思われるがこれ以上は調べるすべが無い。
仮に悪い部品が見つかっても交換部品は手に入らないだろうし、何より原因追及は面倒過ぎる。そこで電子回路は切り捨てて、モーターだけ使うことにした。

扇風機は低速でしか使っていなかったので灰色線と茶色線を試しにAC100Vに繋いでみると正常に低速回転してくれた。この状態で半日程度連続試運転をしてみたが問題なし。
取り敢えずこれで組立直してみた。コンセントにプラグを差し込むと低速運転を始め、止める時はプラグを抜くという原始的な扇風機になった。
ACラインに手動のスイッチを入れればON/OFFだけはできる。
これで暫く使ってみることにした。電子基板は外したため待機電力がゼロになるというメリットもある。

モーターケースを触ってみると以前よりも熱くならない。ファンが運転中に停止する原因は推定だが、トライアックに繋がる3本のモーター線のうち1本を選択した時に残りのいずれかにも何らかの異常動作で電圧がかかり、モーターが発熱停止したのではないだろうか?
モーター自身に真因が潜んでいる可能性もある。

いずれにせよ、最もシンプルな形で修復したので今後モーターの寿命を全うするまで働いてくれるだろう。これをオッカムの剃刀的修理法と名付けたい。

電磁界シールドの難しさ2025年02月15日

ラジオ工作の趣味はノイズやシールドとの闘いである。
ラジオ作りを始めた頃からノイズや発振に悩まされた。
古くは高1ラジオを作った頃。高1とは高周波増幅1段のストレートラジオのこと。
高周波増幅管6D6にはシールドケースを被せなければならないことやアンテナコイルとプレート側同調コイルとはシャーシの上側とシャーシ内側とに離して取り付けることで静電結合を防ぎ、又一方は立てて他方は寝かせるようにすることで磁力線を直交させて電磁的結合も防いだ。
受信機程度ならシールドも比較的容易だが、SSB送信機となると生ずる電磁界の強度も上がるため、かなり本格的なシールドが必要になる。
アマチュアの間でポピュラーな終段管807は足も長くて動作安定性には難があり、ピース缶などでシールドすると共に終段回路全体は大きな板や網で覆うようにして電磁波の漏洩を防ぐのが常道だった。SSB送信機をオールバンドで作ろうとすると色々な発振に悩まされる。バンド切替スイッチは各段間でシールド板を立てて回り込みを防ぐが、スイッチの軸を通して前段に回り込みを起こしてしまう事などもザラであった。
各部品のグランド(接地)への落とし方は最重要で、これにより動作の安定性やノイズ特性が決まる。オーディオでは1点アースが基本だが高周波では部品のリード線を極力短くするために1点ではなく、多点の最短アースを行うがこれはグランドの中で迷流を生じてトラブルの1因となる。従って各増幅段毎に1点アースを守りつつ最短アースも守るという技が必要になる。これを体得するには多くの実製作経験と実験検証や失敗経験が必要だった。

その後、無線機の多くがメーカー製になったおかげでこのような取り組みは過去の話となり、今は安定な無線機を気楽に使える時代になった。しかしメーカー製であっても問題を起こすものはある。ここでは一例としてIC721で経験したトラブルとその解決事例について記す。

ある時、18MHzバンドで送信すると回り込みらしき不安定な状態が発生した。
アンテナを接続した状態で送信出力を上げていくとSWR≒1だったものが突然高いSWRを示した。直ぐには原因がわからないので散歩しながら考えた推定原因は、何らかの発振で、出力周波数が18MHzからずれた状態で送信されるためではないかということ。つまり18MHzで送信している状態ではアンテナとマッチングが取れているのでSWRは正常である。しかし周波数が突然別の周波数にジャンプすればアンテナの共振周波数と異なるからSWRが上昇する現象が説明できる。

そこで出力端子にオシロスコープを繋いで波形観測を行った。
18MHzCWモードで徐々に出力を上げていくと、40Wを出したところで5W位のパワー増が一時的に発生する。そのときのオシロ波形は、周波数が高いため見にくいが、明らかに歪があり、正弦波の波形から突然頂部が斜めに尖った感じの歪み波形に転じる。何らかの異常発振を起こしているようだ。これがSWR変化の原因と推定できる。そのあと、21MHz及び14MHzで同様なテストを試みたが発生なし。18MHzだけの現象のようだった。出力は40W程度が発生しやすく、18MHzの送信出力が突然19MHz辺りにジャンプする。
そこから出力を下げていくと正常に戻り、また40W以上に上げていくと正常化する。
以上の結果から次のような原因仮説が立てられる。

ある出力と周波数の条件でパワーユニットで寄生振動が発生する。この寄生振動は設定周波数とは異なっており、このためアンテナの共振域とずれてSWRは悪化する。
寄生振動は18メガバンドだけのようだが、18メガはBPFが本来21メガ用を共用している簡易的設計であるため、不安定になりやすいのかもしれない。ICOMのパワーユニット設計に問題があるのだろうが、経時的な劣化で基板やシールドの接触不良等が生じて不安定な回路になっている可能性がある。そこでパワーユニットのシールドやアース、接触面酸化などを調べてみることにした。

IC721のパワーユニットを分解した様子が上の画像で、右側がパワーユニット。この上に金属シールド板がねじ止めされて完全シールドする構造になっているがその部分は外した状態。シールド板のメッキを見ると長年を経て表面酸化が多いように見えた。そこでねじ止めする部分を中心に磨いて相手側との接触抵抗を下げることでシールド性を上げてみた。
シールド板をアルミダイカストのパワーユニットに強めのトルクでねじ止めして組み直して再度測定。
今度は18MHzで出力を上げて行っても寄生振動の発生は見られず、正常に動作するようになった。結局シールド板の接触抵抗が増えてパワーユニットのシールドBOX内のグランドに電位差や迷流が生じて電力増幅回路動作が不安定になっていたと考えられる。このような症状に遭遇したのは初めてで、高周波電力増幅回路の難しさを実感した。

高齢者の運転免許更新2024年08月27日

75歳になると後期高齢者で運転免許更新のハードルも格段に上がる。
今年6月に認知機能の検査、7月に運転実技講習と各種視認性確認、そして8月にやっと免許更新手続。合計3段階のチェックを経て昨日ようやく免許を発行してもらえた。
高齢者の事故が多くなったため、免許更新を諦めるように更新の障壁を厳重にしているというのが本音だろう。
実際、今回のような面倒さを考えると次回はもうやめようと言う気にもなる。
しかし認知症検査や運転実技講習が高齢者の事故抑制にどれほど貢献するかは疑問だ。
高齢者の重大事故の殆どはアクセルとブレーキの踏み間違いか逆走によるもの。
逆走に関しては認知機能との相関は高そうだが、アクセルとブレーキの踏み間違いはAT車が持つ根本的な危険性に由来する。その意味ではMT車よりも安全運転が難しいのがAT車だ。表面的な取り扱いの楽さで世の中はあっという間にAT車が席捲してMT車は購入も難しくなった。言わば安全性を犠牲にして便利さだけを取ったのがAT車。行政が自動車産業優先思想のために欠陥とも言えるAT車を広めてしまった結果が今の状態である。
AT車の操作のできない未熟な老人のために高齢者全体が運転免許更新困難化させられている。
高齢者の免許更新ハードルを上げることで運転者数を抑制するよりも、高齢者はMT車限定にしたほうが余程重大事故抑制になる。世の中は楽へ楽へと1方向への変化しかできないから今更MTには戻せないだろうが、MT車ならペダルの踏み間違い事故は本質的に起こり得ないだろう。(理由は2019年4月21日に当ブログに書いた)
技術の進化は時としてこのように重大な副作用を持ったシステムを生んでしまう。
軽自動車に多く採用されたアイドルストップ機能も馬鹿な技術の一つだ。頻繁にエンジンを切ることでアイドル運転時間を減らして燃費性能を上げるのは良いが、それ以上にバッテリーやスターターモータを酷使するし走行のスムーズさも相当犠牲になる。自分も一時期軽自動車にしようと思ったことがあるが、この無駄なアイドルストップ機能が嫌で選択肢が無かった。僅かな燃費向上のために部品コストを上げてトータルで多くの損失を生むのがこの機能だ。
だがこの機能の馬鹿々々しさにやっと気づいてアイドルストップ機能を省いた車も登場しつつあるようだ。
そういえばスタータ無しでエンジンを同期燃焼技術により再起動させる技術テーマも研究されていたと思うがあれは今どうなっているのだろう?
法令による規制がなされると、それを達成するだけのために総合的な無駄やネガティブな面には目もくれず目的達成のために強引な方法で突っ走るのが産業の持つ宿命とも言えるが、規制を利用した差別化や利益のために敢えてそうやって変更をしているふしもある。

スマホの電池消費量増大と対策2022年05月16日

楽天回線でoppoのA73スマホを使い始めた当初から電池消費量が気になってデータを取り続けた。スマホはあまり使わずスタンバイ状態のままが多いので特にスタンバイ状態での電池消費を気にかけている。(以降は全てほぼスタンバイ状態のままでの電池消費率を記す)
当初の標準的なスマホ設定での電池消費率は11~12%/day。但し一日中一定しているわけではなく、スタンバイ中でもバックグラウンド通信をしていたり不規則な作動もするので電池消費量はいつも変動をしている。それでも日単位で見ていれば条件が変わらない限りほぼ平均的一定値に収斂する傾向がある。しかし4月半ば頃突然に電池消費が急増し、30%~40%/dayくらいの速さで電池消費をするようになってしまった。色々設定を変えてみたり、他のスマホに機種変更してみたが変化はなかった。機内モードにした時だけ殆ど電池を食わない状態に回復するので基地局からの電波状況による可能性が高いと考えられた。電界強度は以前だと-90dBm位あったものが-105dBm以下になっている。スマホは基地局からの電波の強度に応じて送信出力を自動調整するから、基地局からの電波が弱くなればそれに応じて自分の出力を上げて電池消費が増大する。ある日を境に電池消費率が3倍にも増えたのは基地局からの電波が何等かの原因で弱くなったからと推定された。この時期での変化は2つあって、一つは楽天回線のカバーエリア不足を補うためのauのパートナー回線が停止しつつあったこと。もう一つは別方向に新しく基地局ができて稼働を始めたこと。前者は800MHz帯の回折しやすい特性を持っていて家の中などで楽天の電波が弱い場合に補助効果を持つからこれを停止すれば圏外になる可能性がある。後者は基地局の配置条件の変化に伴い放射強度を調整することでこれまで問題なかったエリアに影響して場所によっては電界強度が大きく低下するケースも考えられる。結局楽天に問い合わせてみると原因特定や対策は時間がかかるのでドコモのsimを内蔵した代替機を貸してくれた。これは全く問題なく快適に動作するのだが、いつまで使用可能なのかわからないし電話番号が別の新しい番号のため使いにくく、結局あまり使っていない。
従来の自分の番号のスマホをどうにか使えないだろうかと電池の消費要因を更に調べてみた。結局電池を一番食うのはVoLTE(標準電話)で常に基地局と通信していることにより電力消費が大きい。次に色々なアプリがバックグラウンドで通信することによる。だから機内モードにすればVoLTEもモバイル通信も止まるので電池消費は収まる。そこで家の中だけでも4GLTEを使うのをやめて自宅のwifiで代用することを試みた。この場合VoLTEは使えなくなるが楽天はLINKというIP電話がwifiでも不十分ながら使える。不十分の意味は、wifiだと基本的に番号通知がされない点にある。しかし着信の場合は自分の電話帳に登録された相手からの電話なら相手の名前が通知されるのであまり問題はない。問題は発信する場合で、こちらの番号は表示されないため怪しまれて電話を取ってくれない致命欠点がある。だがこれは自分から電話を掛ける場合のみモバイルデータ通信をオンすればLINK電話からでも番号通知されるので問題にはならない。あとは肝心な機内モードでwifiのみ常時オン状態の場合の電池消費率だが、これは概略6%~10%/day程度に収まっていることが確認できた。つまりwifiの常時動作による消費電力のほうがモバイル回線接続よりもずっと電池消費率が少ない。特にwifiは家の中では電界強度も強いため常に低電力での接続が期待できる。もちろん基地局からの電波が強いエリアならwifiと比べても消費電力は大差ないだろうが、我が家のように基地局から離れた悪い条件下ではwifiを使うほうが圧倒的に有利である。外に出るときは自宅のwifiは使えないのでモバイルデータ通信をオンする必要があるが、楽天の電波は回折性が低いために家の中では弱くても外に出れば強くなり問題は少ない。以上からwifiで補間することで対策になりそうだ。
このように苦労の多い楽天をなぜ使うのかと言われれば、それは安いこともあるが、問題のあるものほど調べてみたり対策を考えたりと興味が尽きないからである。

スバル3602022年05月09日

昔、我が家の合い向かいに富士重工伊勢崎製作所第二工場という大きな工場があった。昭和30年代初頭にその敷地の一角にあった実験室でスバル360の開発が行われた。私がそのことを知ったのは随分後の話で当時は近所の人達さえも誰も知らなかったろう。開発は随分苦労したようで例えばトーションバーが疲労破壊して材料や熱処理の変更を行いながら何度も何度も耐久試験を繰り返したなどの話を聞いたことがある。スバル360の開発拠点がなぜ伊勢崎だったのか?これは私の想像だが伊勢崎市には板垣サンライトという当時は有名な自転車オートバイの製造会社があった。自転車オートバイというのは自転車に小さな2サイクルガソリンエンジンを取り付けて回転軸を自転車後輪のタイヤに押し付けることで摩擦により動力を伝達する原始的な原動機付き自転車だった。板垣サンライトは日本有数の自転車オートバイメーカーであったがやがて本田技研などに追い抜かれて経営不振に陥り倒産した。しかし板垣には優秀なオートバイの設計開発技術者が多く居て彼らは他の企業に移り、その後も活躍した。その中で富士重工に移った人たちが伊勢崎第2工場でスバル360の研究開発に携わり、伝承された板垣の技術が開発成功を導く要因になったと考えられる。私も小学生の頃、板垣の自転車用エンジンの中古品を手に入れて毎日分解組立して遊んだ思い出がある。
その富士重工伊勢崎第2工場も今は無く、跡地がスーパーマーケットに転用されている。そこの片隅にスバル360開発拠点であったことを記したモニュメントが残っており、上の画像がそれである。

寄生励振アンテナ2022年05月07日

最近、ある局と交信したらアンテナは別のバンドのロータリーダイポールの近傍に平行にエレメントを置いただけの無給電の寄生エレメントのアンテナという話だった。あれ?と思ってさらに話を聞いたら別の局から教わった面白い方法で珍しいでしょう?と説明してくれた。実はこのタイプのアンテナは私が昔実験したことがある。クリエートの214Aという14/21MHzの2バンド用八木アンテナを使っていた時に28MHZバンドに簡易的に出られるようなアンテナを付加したいと思った。そこで28MHzに共振するエレメントを214Aのラジエータエレメントの近傍に設置して誘導により給電できないだろうかと考えた。近接させた28MHzのエレメントの距離や長さを調節するとうまく28MHzに共振し、誘導のみで給電することができて28MHzバンドまで使うことに成功。この方法はオリジナルがあって、ハイゲイン社のExplorerというアンテナで使われていた。しかしExplorlerは元のラジエータエレメントの両サイドに計2本の寄生励振エレメントを配置する構造だった。これはさらに古い文献を調べるとスタンフォードのJ.T.Bolljahnが1950年にUS特許を取得したOpenSleeveMonopoleが原典のようだ。ダイポールアンテナの外側に接触しないよう中空のパイプを通して同軸状に形成し、ダイポールからの誘導で非接触給電させるもの。この中空パイプを2本のエレメントに置き換えたものがハイゲインのExplorer。私が考えたものは寄生励振エレメントを2本ではなく1本に簡素化したもの。1本のエレメントでも問題なく寄生励振ができることが分かったが、1本の寄生エレメントによる方法はそれまで発表された事例はなく、この点に関しては一応の独自性があるだろうと考えている。この、一本の寄生エレメントによるバンド拡張法実験は34年前のCQ誌1988年10月号に寄稿したが、その後クリエート社のVダイポールに50MHzバンドを付加するのにこれと同じ方法が用いられるようになった。
昔行ったささやかな実験が今もアマチュアの間で使われていることを今回たまたまの交信で知って少し嬉しかった。(写真は1988年に実験した寄生励振アンテナ:214A八木アンテナのラジエータエレメントに近接して平行な別の寄生エレメントを配置した様子)

帯域幅可変フィルタの着想2022年03月22日

昔アマチュア無線に夢中だった高校生の頃(1966年頃)、SSB(SingleSideBand:単側波帯)の通信方式に非常な興味を持っていた。当時アマチュア無線でもSSB方式による通信はまだそれほど多くなく、アマチュアにとって格好の技術課題だった。学校でも授業など聞かず回路のことばかり考えていた。ある時ヘテロダイン方式の周波数変換回路を色々考えていて帯域幅を可変にする方法を思いついた。第1中間周波数f1の第1フィルタの後に周波数変換回路を設けて局部発振周波数f2を混合してf1-f2の第2中間周波数を得る。この第2中間周波数を第2フィルタに通すことで第1フィルタと第2フィルタの合成フィルタが実現できる。この時、局部発振周波数f2を可変にしてやることで第1フィルタと第2フィルタの通過帯域をずらすことが可能となり、帯域幅を任意に変化可能となる。具体的には例えば第1中間周波数2MHzで帯域幅3kHzの第1フィルタと第2中間周波数455kHzで帯域幅3kHzの第2フィルタを組み合わせる。この時、局部発振周波数f2を1545kHzにすれば2つのフィルタで合成された帯域幅3kHzの2段フィルタとなる。そして局部発振周波数f2を2.5kHzほどずらせて1547.5kHzにしてやれば帯域幅は0.5kHzに縮小できる。つまりf2を1545~1547.5kHzの間で可変にすれば帯域幅を3kHzから0.5kHzの間で連続的に任意の帯域幅にすることが可能となる。当時読んでいた無線技術誌や専門書やメーカー製品の中ではそのような回路は見つけられなかったので十分独自性があるだろうと悦に入っていた。特許出願をしてみたいと思ったが当時はその方法もわからずメモに書いたまま埋もれた。
その10年位後に同様な方式を搭載する2段フィルタのSSBトランシーバのメーカー製品を見るようになった。果たして自分の考えた2段フィルタ方式の方が技術的に早かったのかどうかは判らない。電子回路は基本コンセプトとしては製品化よりずっと前に存在する可能性が高いし、以上述べたような可変フィルタは回路を考えていけば誰でも着想できる可能性がある。しかし其の頃はもしかしたら自分の着想のほうが早かったのではないかという思いに囚われた。その当時特許出願していれば先行技術にどんなものがあったのかが明確に分かり、得心することが可能だったろう。
結果に関わらず自分の気持ちが納得できるような客観的判定がされることはその人の人生にとっても有益であろうと思われる。

風呂の湯漏れ2021年12月26日

風呂に入っていたら浴槽のお湯がどんどん減っていくのに気が付いた。足し湯を繰り返して何とかその場を切り抜けることはできたが、もし管路が破れたのなら大変なことだ。
湯冷めを気にしながら直ぐに原因究明を始めた。管路の漏れがあっても家の内部配管の問題となるので簡単に見つけることはできないが外の給湯器回りは特に水漏れらしいものはなかった。
お湯の減る速度が速かったので一番考えられるのは浴槽の排水口からの漏れ。ゴム栓には特に異常は無さそうだったが排水口に押し込んでみたら僅か遊びがあるように感じた。そこで排水口の中に装着されているストレーナーを外してみると今度はゴム栓がぴったりと収まって固着される。どうもストレーナーが邪魔をしているようだと思い、ストレーナーを眺めてみると形状が上下で対称ではなく、片方に凹面を持っていることがわかった。そこでストレーナを逆にして装着し、またゴム栓を嵌めてみると今度は遊びが収まったようだった。結局ストレーナーの装着方向を間違えて高さが増え、ゴム栓が途中までしか入らないようになっていたためにこの隙間から湯が漏れたと考えられる。
だがストレーナーの上下を入れ替えた状態でも、ストレーナーが無い状態ほどゴム栓はきっちりと嵌らない。どうもゴム栓の嵌め合い部の径が小さくなった可能性がありそうだ。この状態でもゴム栓が水圧で押されれば完全にシールできる状態まで押し込まれることは確認できた。従って今回のトラブルの直接原因はストレーナーを洗った時に上下の装着方向を間違えたことだと言える。
しかしゴム栓の寸法が減少していなければたとえストレーナーの装着方向を間違えていてもシールは成立していた。これまでもストレーナーの方向はあまり気にせず使っていたが特に湯漏れのトラブルはなかった。多分ゴム栓の径が十分あったからだろう。
基本的に排水口のストレーナーとゴム栓の間に十分な隙間が確保されていればゴム栓の径が減少して深く入るようになってもストレーナーに突き当たることはない。ストレーナーの装着方向を正しくしてもゴム栓の摩耗や変形による径の減少がもっと進めば湯漏れは再発することになる。即ちこの浴槽の耐久寿命を決める重大なパラメータとしてゴム栓とストレーナーの間の隙間量がある。メーカーは本来ストレーナーとゴム栓先端との間の隙間を十分余裕を持った設計にするべきだったのではないだろうか?おかげでこちらは風邪をひきそうになった。

LED電球を使ってみる2021年12月09日

自宅の照明は時代遅れでいまだに蛍光灯と白熱球ばかりである。長い間電気スタンドに用いている電球形蛍光灯がそろそろ寿命のようなのでLED電球を初めて買ってみた。電磁ノイズが心配なのでこれまでLEDは避けていたが、値段の安いものなら試してみても良いだろうとオーム電機の60W電球相当のものを買ってみた。価格は税込で398円と非常に安い。型番はLDA7L-GAG28というもの。
早速取り付けて点灯し、電磁ノイズを調べてみた。短波帯を聞いてみた限りでは特にLED電球からのノイズらしきものは見当たらなかった。しかしこれは外部アンテナで聞いているために検知できないのかもしれないと考えて、条件の厳しい室内アンテナのFM/AMラジオでさらに調べてみた。これまでの電球形蛍光灯でもFMラジオに混入するノイズが多かったが、今回試したLED電球ではそのようなノイズが全く感じられないのに驚いた。FMだけでなくAMの色々な放送を聞きながらライトをオンオフしてみたが全く差異を感じない。これは予想外に良い結果だった。最近はインバータ式電気器具やLED照明らしきものからの短波ノイズが酷くて悩みの種である。LED自体は直流駆動なのだが、家庭用交流電源から供給するために変換に伴う電磁ノイズが宿命的なものとなっている。今回試したオーム電機のLED電球は低価格商品であるにもかかわらず電磁ノイズ特性が極めて優秀である。内部の電源回路については分からないが適切なノイズ対策がなされているのだろう。電磁ノイズは不可避なものではなく、メーカーの考え方次第で完全な対策が可能であることをこの製品が証明している。これまでの日本の電磁ノイズ基準はメーカー保護の視点ばかりで非常に緩いものであり、巷にはあらゆる電磁ノイズが溢れている。恐らく自社の製品が放射する電磁ノイズのスペクトルやレベルを測定さえしていないメーカーが多いのだろう。
メーカーがその気になれば低コストで電磁ノイズは抑えられることをオーム電機のLED電球が示してくれている。

SDGs2021年01月09日

SDGsは2015年9月に国連で策定されたSustainable Development Goalsの略語で「持続可能な開発目標」と訳される。時々目にする言葉ではあるが日本ではあまり認識度が高くないようだ。自分自身これまで大して関心を持ってこなかった。SDGsの目標には、持続可能な開発、貧困をなくす、質の高い教育、性的平等、持続可能な経済成長、持続可能な生産と消費、継続可能な都市と人間の居住、気候変動への行動、生物多様性の保護、国際的不公平の是正、平和な社会などを全人類のゴールにしようというもの。しかし残念なことに日本人のこれらのゴールに対する意識は世界各国の中でも低く留まっている。日本は第二次大戦後奇跡的な経済復興を遂げて豊かな国になったが、栄える国は必ず衰亡するという歴史の通り国力は急速に低下しつつある。豊かさは国民に勤勉意欲を低下させる。この国は今や頑張らなくても困らないし何とか食っていけるという弛緩した意識で覆われた所謂ぬるま湯状態にある。だからSDGsの目標を見ても共感はするが自分たちの事としての切実感がなく現実に行動しなければという意識は生まれず、国民の関心も薄い。
この人間による開発がもたらす持続性への脅威に加えて昨年から新型コロナ感染病の脅威が加わった。一方、日本という国は昔から災厄に見舞われ続けてきた。方丈記には疫病や嵐、地震、争いなどあらゆる災厄に襲われたことが記されている。今の時代になってやっと一時の安堵が得られているとも言えそうだがそれでも感染病や地震や気象災害は相次いでいて昔と変わらない。ぬるま湯の社会は互いに共感することで満足しているだけで、意識を変えていくのに必要な異質な事や驚異には興味を持たなくなりやすい。そして新型コロナの問題の出現によりSDGsに対する関心はさらに薄れそうである。しかしもっと長い目で見ればSDGsに真剣に目を向けてみることの大事さに気づくだろう。