アイソトロンアンテナについて2019年07月05日

ハムバンドを聞いていたら、アイソトロンアンテナを使っているという局が出ていた。画像はその代表例で、形状は種類があるが、要はコイルの両端に電極を取り付けて、その電極同士のキャパシタンスにより共振を行わせる。これに同軸ケーブルから電力供給する仕組みである。共振回路をトップに形成したアンテナといえば少し前にもEHアンテナやスーパーラドがあった。実はこれらのアンテナの原型としてはこれらより前に米国特許を得たCrossed field antennaというものがある。動作説明についてはどれも似非科学っぽい納得のいかないもの。しかし、波長に対して小さな共振回路と小さな金属部があるコンパクトアンテナであるにも関わらず意外に飛ぶというレポートも多いので一定の人気があるようだ。給電点を端部から電圧給電するアンテナの原型としてはエンドフェッド(端部給電)アンテナがある。たとえば以前ここに書いたツェッペリンアンテナが有名だが、これは放射エレメントをきちんと1/2波長に共振させたものであり、原理上フィーダー(給電線)に不平衡電流は流れない。だがアイソトロンでは共振したエレメントはなく、あるのは波長に比べて十分小さい金属の容量片と大きめのコイルだけの共振部だけである。この共振部の端部はハイインピーダンスの電圧給電状態であり、ここに1/2波長に共振したエレメントを取り付ければツェッペリンアンテナと全く同様な動作が期待できる。アイソトロンでは共振したエレメントはなくても給電用の同軸ケーブルが繋がれているため、このケーブルの外皮にはツエップアンテナと同様に高周波電力が供給されることになる。つまりこれは同軸ケーブルの外皮をアンテナエレメントと見立てた先端給電型アンテナと見ることができ,アイソトロン本体はマッチング部と見做せる。単一型のアンテナ、たとえば垂直アンテナなどでは1/4波長のエレメントの根本から電流給電するのが通常のやりかただが。このエレメントの先端は電圧最大となるため、この先端部に電圧給電をしてやれば全く同様に動作する。これと同じで、アイソトロンでは同軸ケーブル外皮先端に電圧給電をしてやることで同軸ケーブルをアンテナエレメントとして動作させる。この場合、同軸ケーブルの長さがうまく共振していれば、ケーブルはアンテナとして効率よく動作するが、共振していない長さでもある程度の電流は流れるため中途半端なアンテナとして動作できる。だから同軸ケーブルの長さと周囲条件により、良く飛ぶケースとそうでないケースがありそうだ。もちろん金属容量片やコイル自身からの放射もあるが同軸ケーブルからの放射に比べたら格段少ないだろう。この種のアンテナの中で敢えて共振しないエレメントを繋いだものにブロードバンド(BB)アンテナというものがあり、これもやはり給電用のケーブルへ流れ込むコモン(同相)電流が多い。またEHやスーパーラドも同様である。このように同軸ケーブル自体をアンテナとするものは単一型アンテナとしてそれなりに飛ぶが、同軸ケーブルに流れるコモン電流により、電灯線などとも結合して様々な電波障害を引き起こしやすいのでお勧めできない。給電点に厳重なコモンフィルタやソータバランを入れれば同軸ケーブルへのコモン電流は阻止できるが殆ど飛ばなくなる筈である。アマチュアのアンテナであっても飛びさえすればいいというわけではなく、電磁波障害を引き起こしにくいアンテナであることは最も重要な基本条件と心得る必要がある。

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