論理的正しさとわかりやすさ2019年07月02日

論理的に正確であることとわかりやすさは全く別物である。その良い例が数学的表現。例えば極限の基礎概念についての有名な、
「任意の正数εに対して適当な正数δが存在して、0<|x―x0|<δを満たす全ての実数xに対し、|f(x)―y0|<εとなるようにすることができる」というような表現。これは
「関数y=f(x)においてその変数xが一定の実数x0に限りなく近づくとき、それにつれて関数f(x)の値がやはり一定の実数y0に限りなく近づいていくならば、関数f(x)には極限値y0が存在する」ということを述べている。
最初の「」内の文章はまともな日本語とは思えないような文章だが論理的には正しい。二番目の「」内の文章は最初の文章に比べればずっとまともで理解しやすいだろうが正確さには欠ける部分がある。たとえば“限りなく近づく”というやや曖昧な表現を含んでいる。最初の文をもう少しわかりやすく表現するなら“任意の正数ε”ではなく“どんな小さな正数ε”と書くべきである。このような分かりづらい表現がまかり通る結果、微積分は最初の最も重要な入口である“極限”の概念でアレルギー患者の山を築くことになる。この概念の理解なしにはその後全てが中途半端になってしまい、その結果学ぶ意欲を無くさせる。正確であることは大事なことだが、それに拘るあまり、結局全く理解されないということは世の中でもありがちである。目的に応じて正確さの縛りを緩めてやるということも必要かもしれない。法律の条項などでも正確さを期するあまり、似たところがある。ちょっと読んだだけでは何を言っているのかわからない。まるで専門家が部外者にわからなくするために防衛線を張っているようにさえも感じられるが、そうではなく、絶対に誤りがないように表現しようとした結果である。表現を正確さの軸と分かりやすさの軸の直交座標で判断するとすれば、正確であってわかりやすい表現を専門家ならばもっと追求するべきだろう。

レジ袋雑感2019年07月04日

 私はまだレジ袋問題が叫ばれていなかった頃から長年の間レジ袋をなるべく貰わないようにしてきた。別に環境主義というつもりではなくて、単にレジ袋が貯まってしまうのが煩わしかったからだ。
レジ袋をもらわないで買い物をする方法として私がずっと実践しているのは、常に自分のレジ袋を携行すること。レジ袋は折り畳めば薄く小さくなってポケットにしまっておけるので買い物の有り無しに関わらず常時携行可能であり、極めて便利で実用的。その後エコバッグなどを幾つももらったりしたが、これらは手に持たねばならないため買うという目的をしっかり持って店に行く必要があり、かえって不便で家に保管されたまま眠っている。私は店にふらりと入って買いたいものがあれば買うし、なければ買わないで出るという主義なのでいちいちバッグなどを持つ気になれない。ポケットに袋が入っていない時にはレジ袋をもらうが、これまで90%以上はもらわずに済ませられた。その間にレジ袋を断るとサービスしてくれる店も増えてきたので一挙両得である。ただ、店によってはレジ袋を断ると商品の精算をしたものかどうかの判別に困るのか、テープを貼られたりしてかえって面倒扱いされることも稀にある。しかしこの方法によれば一枚のレジ袋で大体30回くらいは使いまわしができるので現代の迷惑者のレジ袋にとっても本望だろう。この方法は将来レジ袋が世の中から無くなれば補充できなくなるのでその時は面倒でもエコバッグを持参するしかないかと思っている。
環境対応は、環境にやさしくという精神だけで不便さを押し付けるのではうまくいかない。便利さを損なわないで環境にやさしい方法を考えないと定着しにくいだろう。

アイソトロンアンテナについて2019年07月05日

ハムバンドを聞いていたら、アイソトロンアンテナを使っているという局が出ていた。画像はその代表例で、形状は種類があるが、要はコイルの両端に電極を取り付けて、その電極同士のキャパシタンスにより共振を行わせる。これに同軸ケーブルから電力供給する仕組みである。共振回路をトップに形成したアンテナといえば少し前にもEHアンテナやスーパーラドがあった。実はこれらのアンテナの原型としてはこれらより前に米国特許を得たCrossed field antennaというものがある。動作説明についてはどれも似非科学っぽい納得のいかないもの。しかし、波長に対して小さな共振回路と小さな金属部があるコンパクトアンテナであるにも関わらず意外に飛ぶというレポートも多いので一定の人気があるようだ。給電点を端部から電圧給電するアンテナの原型としてはエンドフェッド(端部給電)アンテナがある。たとえば以前ここに書いたツェッペリンアンテナが有名だが、これは放射エレメントをきちんと1/2波長に共振させたものであり、原理上フィーダー(給電線)に不平衡電流は流れない。だがアイソトロンでは共振したエレメントはなく、あるのは波長に比べて十分小さい金属の容量片と大きめのコイルだけの共振部だけである。この共振部の端部はハイインピーダンスの電圧給電状態であり、ここに1/2波長に共振したエレメントを取り付ければツェッペリンアンテナと全く同様な動作が期待できる。アイソトロンでは共振したエレメントはなくても給電用の同軸ケーブルが繋がれているため、このケーブルの外皮にはツエップアンテナと同様に高周波電力が供給されることになる。つまりこれは同軸ケーブルの外皮をアンテナエレメントと見立てた先端給電型アンテナと見ることができ,アイソトロン本体はマッチング部と見做せる。単一型のアンテナ、たとえば垂直アンテナなどでは1/4波長のエレメントの根本から電流給電するのが通常のやりかただが。このエレメントの先端は電圧最大となるため、この先端部に電圧給電をしてやれば全く同様に動作する。これと同じで、アイソトロンでは同軸ケーブル外皮先端に電圧給電をしてやることで同軸ケーブルをアンテナエレメントとして動作させる。この場合、同軸ケーブルの長さがうまく共振していれば、ケーブルはアンテナとして効率よく動作するが、共振していない長さでもある程度の電流は流れるため中途半端なアンテナとして動作できる。だから同軸ケーブルの長さと周囲条件により、良く飛ぶケースとそうでないケースがありそうだ。もちろん金属容量片やコイル自身からの放射もあるが同軸ケーブルからの放射に比べたら格段少ないだろう。この種のアンテナの中で敢えて共振しないエレメントを繋いだものにブロードバンド(BB)アンテナというものがあり、これもやはり給電用のケーブルへ流れ込むコモン(同相)電流が多い。またEHやスーパーラドも同様である。このように同軸ケーブル自体をアンテナとするものは単一型アンテナとしてそれなりに飛ぶが、同軸ケーブルに流れるコモン電流により、電灯線などとも結合して様々な電波障害を引き起こしやすいのでお勧めできない。給電点に厳重なコモンフィルタやソータバランを入れれば同軸ケーブルへのコモン電流は阻止できるが殆ど飛ばなくなる筈である。アマチュアのアンテナであっても飛びさえすればいいというわけではなく、電磁波障害を引き起こしにくいアンテナであることは最も重要な基本条件と心得る必要がある。

自転車の修理2019年07月12日

今日は久しぶりに自転車の修理を行った。大昔に購入して殆ど新品のまま使っていない自転車が修理の対象。これはブリジストンのグランテックというもので、旅行用に適した折り畳み自転車。タイヤは700C(27インチ)と大きく、ワンタッチで折りたためるのが気に入って購入した。しかし買って間もなく変速機の切り替えレバーが滑ってギヤの切り替えができなくなり、長い間物置に保管したままになっていた。最近もう一台のロードバイクのタイヤが駄目になったのでこのグランテックを復活できないものかと思い、変速レバーを交換しようと計画。しかしその前に悪あがきで不具合変速レバーを分解してみた。構造は変速機からの制御ワイヤーを巻き取る歯車機構とこの歯車溝に爪を引っ掛けて歯車を動かすカムと、カムを動かすレバーとから成っている。レバーを動かして観察してみるとカムの爪が歯車に食い込まず滑ってしまう。カムは巻きバネにより歯車に押し付けられるはずだが、動きが鈍く追従していなかった。カムは円柱状ピンにはめ込まれているのだが、ピンとカムとの摩擦抵抗がバネによるトルクよりも大きいためにうまく戻らない。円柱状ピンとカムの孔のはめ合い隙間にはグリスが充填されており、このグリスが固いため大きな摩擦トルクを生じていると考えられる。そこではめ合い部を洗ってグリスを除去し、代わりに粘性の低いマシン油を塗った。その結果カムは滑らかに動けるようになった。操作レバーは変速比UP/DOWNの2つがあり、2つのカムが使われているので両方同じように洗浄し塗油した。この結果、カムはレバー操作に確実に応答してギヤ切り替えができるようになって一件落着。機械製品の回転軸部にはグリスが塗られていることが多いが、回転軸と軸受け穴との微小隙間にグリスが入ると摩擦トルクが大きくなる。しかもこのグリスが時間経過でさらに粘性が高くなると軸はほぼロックされた状態になってしまう。放置した機械の回転部が回らなくなるのは大体これが原因である。今回のカムによる機構が動かなくなったのはカムを押し付けるバネトルクに対し、カムの軸部の摩擦トルクが上回ったのが原因であるが、設計時に想定したグリスの粘性抵抗の経時的な変化範囲が実際より大幅に低かったという設計条件のエラーもありそうだ。材料の経年劣化は多くの製品で繰り返し続いている問題であるが、設計的な問題も含んでいると言えるだろう。

蛍光管の交換2019年07月26日

世間では照明も多くがLED化しつつあるが、我が家の部屋の照明は相変わらず蛍光灯のまま。それが突然切れた。丸い大きなシーリングライトというもので10年間何の問題もなく点いていたのだが壊れるときは突然だった。蛍光灯は段々具合が悪くなって点滅しながら消えるものと思っていたのだけれど今はインバータ回路が異常を検知して遮断するようになっているのだろう。これまでの点灯時間は凡そ一万八千時間くらいだろうから結構寿命が長いと言えるのかもしれない。そこでまず中を見てみようとカバーを外そうとした。説明書によるとカバーを左右に回せば外れますとだけ書いてある。カバーを回わして見たら90度くらいは回るが突き当たって外れる気配がない。突き当たったらさらに回そうとすると重くなって回るが全く外れない。手を入れてみると本体が一緒に連れ回りするようだ。本当はカバーを回して突き当たったところでさらに回すことでロックが外れるようだが、全体が連れ回って外れない。多分、本体が取り付けられた部分は完全には固定されておらずトルクを加えると全体が回ってしまうようだ。シーリングの外径が大きいので回すトルクも大きくて連れ回りしやすい。本体を手で押さえながらカバーを回せばいいのだろうけれど、それはかなり難しい。結局ゆっくりとカバーを回すから突き当たってもロックを乗り越えるトルク以下で全体が逃げて回ってしまう。ロックを乗り越えるトルクを生じさせるにはどうするべきか?出した解は、慣性モーメントを利用すること。ロックを乗り越える所要トルクをTaとし、本体と天井取り付け部の間の摩擦トルクをTsとする。Ta>Tsである限りロックは絶対に外れない。そこでライト本体の慣性モーメントをJとし、カバーを回して本体のロック部に突き当てたときの本体に与える角加速度をω²とすれば本体で受ける慣性トルクTiはTi=J・ω²となる。
よってJ・ω²+Ts >Taとなる角加速度ω²を与えてやればロックは外れることになる。具体的にはカバーを勢いつけて回してロック部に突き当ててやればよい。早速試してみたらあっけないほど簡単に外れた。同様な問題で困っている人がいたら試してみてほしい。カバーを外して蛍光管を見たら電極付近のガラスが真っ黒になっていて一目瞭然で管の寿命と分かり解決。外したカバーを掃除したら見違えるほど綺麗になり、蛍光管交換後格段明るくなったのに驚いた。これでまだ当分の間LED化することはなさそうだ。