windows10パソコンの再生 ― 2025年03月25日
1年以上前に、主力のノートパソコンが壊れてwindows10が立ち上がらなくなった。四苦八苦して起動は出来るようになったが元々のオリジナルのwindows 8に戻ってしまった。このままではセキュリティ警告が度々出るしエラーも頻発するしで使えないため物置に片付けた。もう捨てようと考えたがその前にOSを再インストールしてみたらもしかしてと思い立ち、興味本位で挑戦してみた。
windows10のOSは現在無料配布をしていないので諦めていたが、既にインストールしていたOSが壊れたのだから再インストールするのは可能ではないかと思い調べてみた。
その結果、ライセンス認証が必要でプロダクトキーが要求される恐れはあるがまだwindows10は手に入れることが可能と判った。
Microsoftのwindows10ダウンロードページhttps://www.microsoft.com/ja-jp/software-download/windows10 に行くとPCにwindows10をインストールするためのメディア作成ツールがダウンロード可能と判った。最初DVDでwindous10インストールメディアを作ろうと長時間かけてダウンロードしたがDVD-Rの容量4.7GBを少し超えるため書き込めなかった。そこでUSBメモリ-にダウンロードすることで無事インストールメディアが作成できた。windows8が中途半端に立ち上がるノート㍶にUSBメディアを挿してインストールを開始した。心配していたプロダクトキーの打ち込みなどは要求されなかった。これはPCに残ったOS情報から再インストールと判定しているためだろう。
数時間かかってwindows10のクリーンインストールが完了。何度か再起動を繰り返した後、無事にwindows10 22H2の画面が現れた。その後、これまでの累積の更新プログラムでまた数時間を費やし、結局丸一日がかりの徹夜仕事になった。結果はwindows8状態のような不安定さもなく正常に動作してくれた。
単なる興味でやってみたらうまく行ったので満足しこのまま仕舞おうとしたが、windows10は今年10月14日が終了期限なので、残った期間寝かせず何か使い道がないか考えてみた。
現在、無線のFT8デジタル通信に古いwindowsXPの㍶を使っているが、とうの昔にサポート終了した危険な代物。但しインターネットに接続せずスタンドアローンで専用に使っているので問題は無い。しかし使える通信ソフトのバージョンも古いため技術進歩について行けない状況になっている。これを再生したwindows10㍶に置き換えるのが良さそうだ。
早速通信ソフトの最新バージョンwsjt-x2.7.0をインストールしてテスト運用を開始。ソフトが大きくなっているせいか処理が重いようだが何とか使える。設定で出来るだけ軽くすることで実用化できそうだ。
今回は廃棄するつもりのノート㍶を費用ゼロ円で再生できたのが有難い上、ちょっとした好奇心も満たすことが出来た。
windows10のOSは現在無料配布をしていないので諦めていたが、既にインストールしていたOSが壊れたのだから再インストールするのは可能ではないかと思い調べてみた。
その結果、ライセンス認証が必要でプロダクトキーが要求される恐れはあるがまだwindows10は手に入れることが可能と判った。
Microsoftのwindows10ダウンロードページhttps://www.microsoft.com/ja-jp/software-download/windows10 に行くとPCにwindows10をインストールするためのメディア作成ツールがダウンロード可能と判った。最初DVDでwindous10インストールメディアを作ろうと長時間かけてダウンロードしたがDVD-Rの容量4.7GBを少し超えるため書き込めなかった。そこでUSBメモリ-にダウンロードすることで無事インストールメディアが作成できた。windows8が中途半端に立ち上がるノート㍶にUSBメディアを挿してインストールを開始した。心配していたプロダクトキーの打ち込みなどは要求されなかった。これはPCに残ったOS情報から再インストールと判定しているためだろう。
数時間かかってwindows10のクリーンインストールが完了。何度か再起動を繰り返した後、無事にwindows10 22H2の画面が現れた。その後、これまでの累積の更新プログラムでまた数時間を費やし、結局丸一日がかりの徹夜仕事になった。結果はwindows8状態のような不安定さもなく正常に動作してくれた。
単なる興味でやってみたらうまく行ったので満足しこのまま仕舞おうとしたが、windows10は今年10月14日が終了期限なので、残った期間寝かせず何か使い道がないか考えてみた。
現在、無線のFT8デジタル通信に古いwindowsXPの㍶を使っているが、とうの昔にサポート終了した危険な代物。但しインターネットに接続せずスタンドアローンで専用に使っているので問題は無い。しかし使える通信ソフトのバージョンも古いため技術進歩について行けない状況になっている。これを再生したwindows10㍶に置き換えるのが良さそうだ。
早速通信ソフトの最新バージョンwsjt-x2.7.0をインストールしてテスト運用を開始。ソフトが大きくなっているせいか処理が重いようだが何とか使える。設定で出来るだけ軽くすることで実用化できそうだ。
今回は廃棄するつもりのノート㍶を費用ゼロ円で再生できたのが有難い上、ちょっとした好奇心も満たすことが出来た。
Honor Rollアワードが届く ― 2025年03月15日

1年半ほど前にDXCCのHonorRollが達成できた。HonorRollとは全世界を現存する340のエンティテイに分けてこれらの全地域と交信を目指し、残存桁数がシングルになると資格が得られるもの。
これを達成したからといって、何の実益も無い純粋な趣味の世界で単なる自己満足ではある。でも実益のない目標を追いかけるのは仕事などの損得とはかけ離れたものであるからこそ楽しい。
しかし、達成できたとは言っても何も形に残らないのは寂しいので最近Certificateを申請してみた。かかった費用は$30.
最初はARRLから印刷できないという返事だったが金は引き落とされていた。不慣れな英語で金を返せと文句を書いて送ったら、出来たから送るというメールが届いた。送られてきたのは上の画像の物。日の出日の入りのグレーライン上にある地球を宇宙から俯瞰した美しいデザインで気に入ったので、これまでの経緯は不問に付した。
ここに至るまでトータルで60年近く要しており、まさに趣味だからこそやれる話。昔はTVに妨害が出るので、真夜中のTV放送の無い時間だけの交信に限られ、多くの珍しい地域との交信の機会を逃したし、自宅のロケーションも悪く、多くのノイズの中から微弱な信号を取らねばならなかった。
色々な障壁で達成するのに普通より随分長い時間がかかったがそれだけに喜びも大きい。
たわいない遊びに過ぎないが、趣味というものは当人には案外真剣な道楽である。
これを達成したからといって、何の実益も無い純粋な趣味の世界で単なる自己満足ではある。でも実益のない目標を追いかけるのは仕事などの損得とはかけ離れたものであるからこそ楽しい。
しかし、達成できたとは言っても何も形に残らないのは寂しいので最近Certificateを申請してみた。かかった費用は$30.
最初はARRLから印刷できないという返事だったが金は引き落とされていた。不慣れな英語で金を返せと文句を書いて送ったら、出来たから送るというメールが届いた。送られてきたのは上の画像の物。日の出日の入りのグレーライン上にある地球を宇宙から俯瞰した美しいデザインで気に入ったので、これまでの経緯は不問に付した。
ここに至るまでトータルで60年近く要しており、まさに趣味だからこそやれる話。昔はTVに妨害が出るので、真夜中のTV放送の無い時間だけの交信に限られ、多くの珍しい地域との交信の機会を逃したし、自宅のロケーションも悪く、多くのノイズの中から微弱な信号を取らねばならなかった。
色々な障壁で達成するのに普通より随分長い時間がかかったがそれだけに喜びも大きい。
たわいない遊びに過ぎないが、趣味というものは当人には案外真剣な道楽である。
電磁界シールドの難しさ ― 2025年02月15日

ラジオ工作の趣味はノイズやシールドとの闘いである。
ラジオ作りを始めた頃からノイズや発振に悩まされた。
古くは高1ラジオを作った頃。高1とは高周波増幅1段のストレートラジオのこと。
高周波増幅管6D6にはシールドケースを被せなければならないことやアンテナコイルとプレート側同調コイルとはシャーシの上側とシャーシ内側とに離して取り付けることで静電結合を防ぎ、又一方は立てて他方は寝かせるようにすることで磁力線を直交させて電磁的結合も防いだ。
受信機程度ならシールドも比較的容易だが、SSB送信機となると生ずる電磁界の強度も上がるため、かなり本格的なシールドが必要になる。
アマチュアの間でポピュラーな終段管807は足も長くて動作安定性には難があり、ピース缶などでシールドすると共に終段回路全体は大きな板や網で覆うようにして電磁波の漏洩を防ぐのが常道だった。SSB送信機をオールバンドで作ろうとすると色々な発振に悩まされる。バンド切替スイッチは各段間でシールド板を立てて回り込みを防ぐが、スイッチの軸を通して前段に回り込みを起こしてしまう事などもザラであった。
各部品のグランド(接地)への落とし方は最重要で、これにより動作の安定性やノイズ特性が決まる。オーディオでは1点アースが基本だが高周波では部品のリード線を極力短くするために1点ではなく、多点の最短アースを行うがこれはグランドの中で迷流を生じてトラブルの1因となる。従って各増幅段毎に1点アースを守りつつ最短アースも守るという技が必要になる。これを体得するには多くの実製作経験と実験検証や失敗経験が必要だった。
その後、無線機の多くがメーカー製になったおかげでこのような取り組みは過去の話となり、今は安定な無線機を気楽に使える時代になった。しかしメーカー製であっても問題を起こすものはある。ここでは一例としてIC721で経験したトラブルとその解決事例について記す。
ある時、18MHzバンドで送信すると回り込みらしき不安定な状態が発生した。
アンテナを接続した状態で送信出力を上げていくとSWR≒1だったものが突然高いSWRを示した。直ぐには原因がわからないので散歩しながら考えた推定原因は、何らかの発振で、出力周波数が18MHzからずれた状態で送信されるためではないかということ。つまり18MHzで送信している状態ではアンテナとマッチングが取れているのでSWRは正常である。しかし周波数が突然別の周波数にジャンプすればアンテナの共振周波数と異なるからSWRが上昇する現象が説明できる。
そこで出力端子にオシロスコープを繋いで波形観測を行った。
18MHzCWモードで徐々に出力を上げていくと、40Wを出したところで5W位のパワー増が一時的に発生する。そのときのオシロ波形は、周波数が高いため見にくいが、明らかに歪があり、正弦波の波形から突然頂部が斜めに尖った感じの歪み波形に転じる。何らかの異常発振を起こしているようだ。これがSWR変化の原因と推定できる。そのあと、21MHz及び14MHzで同様なテストを試みたが発生なし。18MHzだけの現象のようだった。出力は40W程度が発生しやすく、18MHzの送信出力が突然19MHz辺りにジャンプする。
そこから出力を下げていくと正常に戻り、また40W以上に上げていくと正常化する。
以上の結果から次のような原因仮説が立てられる。
ある出力と周波数の条件でパワーユニットで寄生振動が発生する。この寄生振動は設定周波数とは異なっており、このためアンテナの共振域とずれてSWRは悪化する。
寄生振動は18メガバンドだけのようだが、18メガはBPFが本来21メガ用を共用している簡易的設計であるため、不安定になりやすいのかもしれない。ICOMのパワーユニット設計に問題があるのだろうが、経時的な劣化で基板やシールドの接触不良等が生じて不安定な回路になっている可能性がある。そこでパワーユニットのシールドやアース、接触面酸化などを調べてみることにした。
IC721のパワーユニットを分解した様子が上の画像で、右側がパワーユニット。この上に金属シールド板がねじ止めされて完全シールドする構造になっているがその部分は外した状態。シールド板のメッキを見ると長年を経て表面酸化が多いように見えた。そこでねじ止めする部分を中心に磨いて相手側との接触抵抗を下げることでシールド性を上げてみた。
シールド板をアルミダイカストのパワーユニットに強めのトルクでねじ止めして組み直して再度測定。
今度は18MHzで出力を上げて行っても寄生振動の発生は見られず、正常に動作するようになった。結局シールド板の接触抵抗が増えてパワーユニットのシールドBOX内のグランドに電位差や迷流が生じて電力増幅回路動作が不安定になっていたと考えられる。このような症状に遭遇したのは初めてで、高周波電力増幅回路の難しさを実感した。
ラジオ作りを始めた頃からノイズや発振に悩まされた。
古くは高1ラジオを作った頃。高1とは高周波増幅1段のストレートラジオのこと。
高周波増幅管6D6にはシールドケースを被せなければならないことやアンテナコイルとプレート側同調コイルとはシャーシの上側とシャーシ内側とに離して取り付けることで静電結合を防ぎ、又一方は立てて他方は寝かせるようにすることで磁力線を直交させて電磁的結合も防いだ。
受信機程度ならシールドも比較的容易だが、SSB送信機となると生ずる電磁界の強度も上がるため、かなり本格的なシールドが必要になる。
アマチュアの間でポピュラーな終段管807は足も長くて動作安定性には難があり、ピース缶などでシールドすると共に終段回路全体は大きな板や網で覆うようにして電磁波の漏洩を防ぐのが常道だった。SSB送信機をオールバンドで作ろうとすると色々な発振に悩まされる。バンド切替スイッチは各段間でシールド板を立てて回り込みを防ぐが、スイッチの軸を通して前段に回り込みを起こしてしまう事などもザラであった。
各部品のグランド(接地)への落とし方は最重要で、これにより動作の安定性やノイズ特性が決まる。オーディオでは1点アースが基本だが高周波では部品のリード線を極力短くするために1点ではなく、多点の最短アースを行うがこれはグランドの中で迷流を生じてトラブルの1因となる。従って各増幅段毎に1点アースを守りつつ最短アースも守るという技が必要になる。これを体得するには多くの実製作経験と実験検証や失敗経験が必要だった。
その後、無線機の多くがメーカー製になったおかげでこのような取り組みは過去の話となり、今は安定な無線機を気楽に使える時代になった。しかしメーカー製であっても問題を起こすものはある。ここでは一例としてIC721で経験したトラブルとその解決事例について記す。
ある時、18MHzバンドで送信すると回り込みらしき不安定な状態が発生した。
アンテナを接続した状態で送信出力を上げていくとSWR≒1だったものが突然高いSWRを示した。直ぐには原因がわからないので散歩しながら考えた推定原因は、何らかの発振で、出力周波数が18MHzからずれた状態で送信されるためではないかということ。つまり18MHzで送信している状態ではアンテナとマッチングが取れているのでSWRは正常である。しかし周波数が突然別の周波数にジャンプすればアンテナの共振周波数と異なるからSWRが上昇する現象が説明できる。
そこで出力端子にオシロスコープを繋いで波形観測を行った。
18MHzCWモードで徐々に出力を上げていくと、40Wを出したところで5W位のパワー増が一時的に発生する。そのときのオシロ波形は、周波数が高いため見にくいが、明らかに歪があり、正弦波の波形から突然頂部が斜めに尖った感じの歪み波形に転じる。何らかの異常発振を起こしているようだ。これがSWR変化の原因と推定できる。そのあと、21MHz及び14MHzで同様なテストを試みたが発生なし。18MHzだけの現象のようだった。出力は40W程度が発生しやすく、18MHzの送信出力が突然19MHz辺りにジャンプする。
そこから出力を下げていくと正常に戻り、また40W以上に上げていくと正常化する。
以上の結果から次のような原因仮説が立てられる。
ある出力と周波数の条件でパワーユニットで寄生振動が発生する。この寄生振動は設定周波数とは異なっており、このためアンテナの共振域とずれてSWRは悪化する。
寄生振動は18メガバンドだけのようだが、18メガはBPFが本来21メガ用を共用している簡易的設計であるため、不安定になりやすいのかもしれない。ICOMのパワーユニット設計に問題があるのだろうが、経時的な劣化で基板やシールドの接触不良等が生じて不安定な回路になっている可能性がある。そこでパワーユニットのシールドやアース、接触面酸化などを調べてみることにした。
IC721のパワーユニットを分解した様子が上の画像で、右側がパワーユニット。この上に金属シールド板がねじ止めされて完全シールドする構造になっているがその部分は外した状態。シールド板のメッキを見ると長年を経て表面酸化が多いように見えた。そこでねじ止めする部分を中心に磨いて相手側との接触抵抗を下げることでシールド性を上げてみた。
シールド板をアルミダイカストのパワーユニットに強めのトルクでねじ止めして組み直して再度測定。
今度は18MHzで出力を上げて行っても寄生振動の発生は見られず、正常に動作するようになった。結局シールド板の接触抵抗が増えてパワーユニットのシールドBOX内のグランドに電位差や迷流が生じて電力増幅回路動作が不安定になっていたと考えられる。このような症状に遭遇したのは初めてで、高周波電力増幅回路の難しさを実感した。
IC721の送信歪特性改良 ― 2025年02月04日
IC721という古いHF無線機がある。35年ほど前に購入した安物の機械。
回路はシンプルなアナログ機で基板も現代のような表面実装型ではなく、個々の部品をプリント基板に挿入し半田付けする古典的な構造だ。このため部品交換や改造がし易いし、故障しても修理が容易で気に入っている。これまで何度も故障したが自分で修理して現在も使用可能な状態にある。この無線機に自作のアナログインターフェースを取り付けてFT8を運用していたが、その送信信号をIC7300のオーディオスペクトラム表示でモニターしてみると重大な問題のあることに気が付いた。
低周波信号を入力すると2次3次の高調波が大きく、第2次高調波を見ると最大出力時―20dB程度にまで達する。1500Hz以上ならSSBフィルタの帯域は2400Hz程度なので第二高調波は3000Hz以上となって抑止できるが、例えば300Hz~1200Hzの入力だと第2高調波が600Hz~2400Hzに発生しフィルタは通過してしまう。結局周波数の低い領域で使うと帯域内スプリアスを発生させて他局に迷惑をかけることになる。
最新の無線機ではFT8の信号波生成をUSB接続のデジタル処理で行うため非常にクリーンで、このような問題は発生しなくなった。一方古い無線機でFT8を行う場合は、PCで生成したアナログのFT8低周波信号をSSB送信機のマイク入力に接続し、平衡変調を行ってDSB波形を生成したあとフィルタで片側波帯を切り落としてSSBを生成する。得られた信号は振幅変動のないFM波に近いものとなるため以降の増幅器が非線形であっても歪を生ずることはない。しかしその前段である平衡変調器までは振幅変調が行われるので回路に非線形性があると信号に歪を生ずる。つまり平衡変調器及びその前段の低周波増幅器までの回路に非線形性があると信号に歪が発生する。これが第2第3高調波歪として現れる。IC721でも歪を発生させているのはマイクアンプと平衡変調器のいずれか又は両方が考えられる。
IC721は元々スピーチコンプレッサのような積極的に歪を生じさせる回路はないので歪の発生源は限られる。以前マイク入力部にダイオードクリッパを付加したことがあるが、これはFT8の信号入力回路には存在しないので問題はない。
どこで歪が生じているのかを調べるのも良いが、FT8低周波のレベルと高調波レベルとの関係を観測してみると、あるレベルから急に歪が増大していることが判った。つまり低周波回路から平衡変調器までのどこかがオーバーレベルで飽和することが原因と推定できる。ならば入力レベルを下げて歪発生を最小にし、そのレベルを下げた分、後段でゲインを上げて補えば良いことになる。
このような方針を立てて回路を調べて行くと後段の高周波増幅回路部にレベル調整用のポテンシオメータR85があることが判った。R85のレベルを上げてその分低周波入力を下げてみると、期待通り歪が低減し、高調波レベルの下がることが確認できた。IC7300のオーディオスペクトラムモニターで確認しながらレベル調整し、出力最大時でも第二高調波レベルを-40dB以下まで下げることが出来た。但し変調度はかなり下がっているので今度はSSBのキャリア漏れが懸念されるがキャリア漏れも-40dB以下であることが確認できた。恐らく昔のSSB送信機はオーディオ信号の変調歪があってもフィルターで切れると考えてあまりレベル配分を気にしてはいなかったのだろう。この報告は昔の無線機でFT8を運用する場合の参考になればと思う。
これでIC721でも問題なくFT8の運用ができることになったが、SSBの音声でも歪が低減して良好になった。
回路はシンプルなアナログ機で基板も現代のような表面実装型ではなく、個々の部品をプリント基板に挿入し半田付けする古典的な構造だ。このため部品交換や改造がし易いし、故障しても修理が容易で気に入っている。これまで何度も故障したが自分で修理して現在も使用可能な状態にある。この無線機に自作のアナログインターフェースを取り付けてFT8を運用していたが、その送信信号をIC7300のオーディオスペクトラム表示でモニターしてみると重大な問題のあることに気が付いた。
低周波信号を入力すると2次3次の高調波が大きく、第2次高調波を見ると最大出力時―20dB程度にまで達する。1500Hz以上ならSSBフィルタの帯域は2400Hz程度なので第二高調波は3000Hz以上となって抑止できるが、例えば300Hz~1200Hzの入力だと第2高調波が600Hz~2400Hzに発生しフィルタは通過してしまう。結局周波数の低い領域で使うと帯域内スプリアスを発生させて他局に迷惑をかけることになる。
最新の無線機ではFT8の信号波生成をUSB接続のデジタル処理で行うため非常にクリーンで、このような問題は発生しなくなった。一方古い無線機でFT8を行う場合は、PCで生成したアナログのFT8低周波信号をSSB送信機のマイク入力に接続し、平衡変調を行ってDSB波形を生成したあとフィルタで片側波帯を切り落としてSSBを生成する。得られた信号は振幅変動のないFM波に近いものとなるため以降の増幅器が非線形であっても歪を生ずることはない。しかしその前段である平衡変調器までは振幅変調が行われるので回路に非線形性があると信号に歪を生ずる。つまり平衡変調器及びその前段の低周波増幅器までの回路に非線形性があると信号に歪が発生する。これが第2第3高調波歪として現れる。IC721でも歪を発生させているのはマイクアンプと平衡変調器のいずれか又は両方が考えられる。
IC721は元々スピーチコンプレッサのような積極的に歪を生じさせる回路はないので歪の発生源は限られる。以前マイク入力部にダイオードクリッパを付加したことがあるが、これはFT8の信号入力回路には存在しないので問題はない。
どこで歪が生じているのかを調べるのも良いが、FT8低周波のレベルと高調波レベルとの関係を観測してみると、あるレベルから急に歪が増大していることが判った。つまり低周波回路から平衡変調器までのどこかがオーバーレベルで飽和することが原因と推定できる。ならば入力レベルを下げて歪発生を最小にし、そのレベルを下げた分、後段でゲインを上げて補えば良いことになる。
このような方針を立てて回路を調べて行くと後段の高周波増幅回路部にレベル調整用のポテンシオメータR85があることが判った。R85のレベルを上げてその分低周波入力を下げてみると、期待通り歪が低減し、高調波レベルの下がることが確認できた。IC7300のオーディオスペクトラムモニターで確認しながらレベル調整し、出力最大時でも第二高調波レベルを-40dB以下まで下げることが出来た。但し変調度はかなり下がっているので今度はSSBのキャリア漏れが懸念されるがキャリア漏れも-40dB以下であることが確認できた。恐らく昔のSSB送信機はオーディオ信号の変調歪があってもフィルターで切れると考えてあまりレベル配分を気にしてはいなかったのだろう。この報告は昔の無線機でFT8を運用する場合の参考になればと思う。
これでIC721でも問題なくFT8の運用ができることになったが、SSBの音声でも歪が低減して良好になった。
ベトナム(続き) ― 2025年01月29日

昨日ベトナム戦争について書いた後、当時ベトナムからSWLカード(こちらの無線信号を受信しましたという受信カード)をもらったのを思い出した。
小一時間手元のカードを引っ掻き回してやっと探し出すことができた。
VIETNAM CONG HOA とある。これはベトナム共和国の正式名称で所謂南ベトナムのこと。
日時は1968年6月8日1537GMTと記されている。1968年はベトナム戦争の一番激しい時期だった。受信者は南ベトナムに送られていたアーカンソー出身のアメリカ人兵らしい。
休憩時間に短波を聴いていたのだろう。
当時はもちろんベトナムでアマチュア無線は許可されておらず、受信のみが許されていたようだ。受信機はドレーク2Bでアンテナは30フィート長のワイヤーとある。
この人はアメリカのW5-10353というSWLナンバーを持っていて母国では短波受信が趣味だったようだ。QSLカードをアーカンソーの自宅に送ってくれとある。その後無事に自宅に戻れただろうか。
当時は私も竹で作った貧弱なキュビカルクワッドアンテナで21MHzに出ており、やっと海外まで電波が飛ぶようになった頃だ。
ベトナムは長くアマチュア無線が禁止されていたが、復興後は許可されて運用局も増えている。
小一時間手元のカードを引っ掻き回してやっと探し出すことができた。
VIETNAM CONG HOA とある。これはベトナム共和国の正式名称で所謂南ベトナムのこと。
日時は1968年6月8日1537GMTと記されている。1968年はベトナム戦争の一番激しい時期だった。受信者は南ベトナムに送られていたアーカンソー出身のアメリカ人兵らしい。
休憩時間に短波を聴いていたのだろう。
当時はもちろんベトナムでアマチュア無線は許可されておらず、受信のみが許されていたようだ。受信機はドレーク2Bでアンテナは30フィート長のワイヤーとある。
この人はアメリカのW5-10353というSWLナンバーを持っていて母国では短波受信が趣味だったようだ。QSLカードをアーカンソーの自宅に送ってくれとある。その後無事に自宅に戻れただろうか。
当時は私も竹で作った貧弱なキュビカルクワッドアンテナで21MHzに出ており、やっと海外まで電波が飛ぶようになった頃だ。
ベトナムは長くアマチュア無線が禁止されていたが、復興後は許可されて運用局も増えている。
映像の世紀 ベトナム勝利の代償 ― 2025年01月28日
1月27日NHKで放送されたものを観た。ベトナムの自由独立に向けた30年間の悲惨な闘いを描いている。記憶に留めるためその概要をここにまとめておく。
1900年頃のベトナムはフランスの植民地で資源が搾取され、人民は奴隷のように低賃金で働かされていた。若きホーチミンはフランスで祖国ベトナムの独立を目指す地下活動を続けていた。1940年には日本もベトナムに進出してフランスと日本の双方から支配される。
1945年日本の太平洋戦争敗戦直後にホーチミンはベトナムを掌握し、一旦は独立を宣言した。しかしフランスはベトナムの独立を認めず、フランスとの戦争が始まる。
強力な軍備のフランス軍と弱小のベトナム軍の激しい戦いの結果、戦略と戦術に優れたベトナムが予想外の勝利。和平協定の結果ベトナムは北と南に分断された。
北はホーチミンの社会主義政権が掌握し、南はアメリカが支援する傀儡政権が擁立された。
アメリカは南ベトナムに軍事支援を進め、北ベトナムは南に人民軍を送り込むと共に南の民族解放運動を支援してアメリカと戦うことになる。
ホーチミンは日本のジャーナリズム、日本電波ニュース社に西側で唯一報道を許した。
その狙いは戦争の実態を米国民にも伝えることで米国内の反戦意識を高めることにある。
1964年アメリカはベトナム南北の争いに本格参入する。世界最強の軍事力を誇るアメリカ対アジアの弱小国北ベトナム。この戦争はゾウとアリの戦争と呼ばれた。
北ベトナムを勝利に導いたのはホーチミンが呼びかけた愛国競争運動による団結だった。
アメリカは北ベトナムを爆撃し、対する北は南に人民軍を送り込んで戦争が拡がっていく。
当初はアメリカ国民も戦争支持が多かったが1968年のテト攻勢から流れが変わってくる。
テト攻勢とは北ベトナム人民軍と南ベトナム解放戦線による旧正月の攻勢である。
南ベトナムのサイゴンを戦場とするテト攻勢は北ベトナム側の失敗にこそ終わったが、テト攻勢以降アメリカ軍の後退は続き、衛星回線の同時期開始により戦争の様子がアメリカ本国にも映像で伝えられ、アメリカ国民はその悲惨さを目の当たりにした。その結果米国内の反戦運動が高まり、結局アメリカのジョンソン大統領は北ベトナムへの攻撃を中止し、米軍はベトナムから撤退せざるを得なくなった。
1975年北ベトナム人民軍と南ベトナム解放戦線はサイゴンを陥落させて勝利した。ベトナムは統一されて、1976年サイゴンはホーチミン市と名前を変えた。
この戦争の結果、アメリカ軍は6万人が戦死。しかし一方アメリカの無差別攻撃によりベトナム側は国土の多くが焦土と化して300万人が犠牲となり、さらに米軍の枯葉剤散布により300万人が被害を受けて今も二世三世への影響は続いている。
ベトナムは自由と独立を達成できたがその犠牲はあまりにも大きかったと言わざるを得ない。この犠牲の大きさを見て思うのは、この戦争を何故回避できなかったのか?何故もっと早く終わらせられなかったのかということだ。思うにそれは大国の奢りにあったのではないだろうか。
ベトナムはその後素晴らしい経済発展を続けて現在に至っている。そして今日もまた世界で愚かな戦争が続いている。
1900年頃のベトナムはフランスの植民地で資源が搾取され、人民は奴隷のように低賃金で働かされていた。若きホーチミンはフランスで祖国ベトナムの独立を目指す地下活動を続けていた。1940年には日本もベトナムに進出してフランスと日本の双方から支配される。
1945年日本の太平洋戦争敗戦直後にホーチミンはベトナムを掌握し、一旦は独立を宣言した。しかしフランスはベトナムの独立を認めず、フランスとの戦争が始まる。
強力な軍備のフランス軍と弱小のベトナム軍の激しい戦いの結果、戦略と戦術に優れたベトナムが予想外の勝利。和平協定の結果ベトナムは北と南に分断された。
北はホーチミンの社会主義政権が掌握し、南はアメリカが支援する傀儡政権が擁立された。
アメリカは南ベトナムに軍事支援を進め、北ベトナムは南に人民軍を送り込むと共に南の民族解放運動を支援してアメリカと戦うことになる。
ホーチミンは日本のジャーナリズム、日本電波ニュース社に西側で唯一報道を許した。
その狙いは戦争の実態を米国民にも伝えることで米国内の反戦意識を高めることにある。
1964年アメリカはベトナム南北の争いに本格参入する。世界最強の軍事力を誇るアメリカ対アジアの弱小国北ベトナム。この戦争はゾウとアリの戦争と呼ばれた。
北ベトナムを勝利に導いたのはホーチミンが呼びかけた愛国競争運動による団結だった。
アメリカは北ベトナムを爆撃し、対する北は南に人民軍を送り込んで戦争が拡がっていく。
当初はアメリカ国民も戦争支持が多かったが1968年のテト攻勢から流れが変わってくる。
テト攻勢とは北ベトナム人民軍と南ベトナム解放戦線による旧正月の攻勢である。
南ベトナムのサイゴンを戦場とするテト攻勢は北ベトナム側の失敗にこそ終わったが、テト攻勢以降アメリカ軍の後退は続き、衛星回線の同時期開始により戦争の様子がアメリカ本国にも映像で伝えられ、アメリカ国民はその悲惨さを目の当たりにした。その結果米国内の反戦運動が高まり、結局アメリカのジョンソン大統領は北ベトナムへの攻撃を中止し、米軍はベトナムから撤退せざるを得なくなった。
1975年北ベトナム人民軍と南ベトナム解放戦線はサイゴンを陥落させて勝利した。ベトナムは統一されて、1976年サイゴンはホーチミン市と名前を変えた。
この戦争の結果、アメリカ軍は6万人が戦死。しかし一方アメリカの無差別攻撃によりベトナム側は国土の多くが焦土と化して300万人が犠牲となり、さらに米軍の枯葉剤散布により300万人が被害を受けて今も二世三世への影響は続いている。
ベトナムは自由と独立を達成できたがその犠牲はあまりにも大きかったと言わざるを得ない。この犠牲の大きさを見て思うのは、この戦争を何故回避できなかったのか?何故もっと早く終わらせられなかったのかということだ。思うにそれは大国の奢りにあったのではないだろうか。
ベトナムはその後素晴らしい経済発展を続けて現在に至っている。そして今日もまた世界で愚かな戦争が続いている。
オートミールを試す ― 2025年01月21日

普段朝食は面倒なので、バナナやトーストなどで簡単に済ましたりすることが多い。
しかしトーストは塩分が多めで、血糖値の上がりやすさの指標であるGI値も高くてあまり好ましい食材とは言えない。
高齢になって体調の悪い部分が増えてきたが、体を維持するために朝食の食習慣を少しでも改善できないかと考えてオートミールを試してみることにした。
オートミールとは、オーツ麦を脱穀加工した穀物である。米と比べると糖質は少なく、食物繊維は多めで、GI値もマイルドな健康的食材。価格も安い。
買ってきたのはロールドオーツと呼ばれる、オーツ麦を蒸してローラーで平にして乾燥させたもの(写真)。これは普通水などに浸して加熱して食するものであるが、そんなことはせずそのまま食べてみた。最初はぱさぱさしていて味も無く、とてもそのままでは食べられたものではなかった。また失敗かと思ったが買ってきたものを捨てるわけにはいかないので減らすために食べ続けてみることにした。ロールドオーツをそのまま食べる人は居ないようだが、これを数日続けてみると意外に慣れてきた。ぱさぱさし過ぎるなら一緒に果物や牛乳なども摂ると食べやすい。よく噛んでいると中々独特な甘みも味わえてくる。一週間を過ぎると平気でそのまま食べられるようになった。
こういう物を食べていると仙人になったような気分になるが古代の人々の食生活もこんなものだったのだろうか?案外悪くないと思えるようになった。
オートミールを朝食にするようになって便通も改善された気がする。合うか合わないかは人によって違うだろうが、自分には案外相性が良いかもしれないので当面続けてみたい。
しかしトーストは塩分が多めで、血糖値の上がりやすさの指標であるGI値も高くてあまり好ましい食材とは言えない。
高齢になって体調の悪い部分が増えてきたが、体を維持するために朝食の食習慣を少しでも改善できないかと考えてオートミールを試してみることにした。
オートミールとは、オーツ麦を脱穀加工した穀物である。米と比べると糖質は少なく、食物繊維は多めで、GI値もマイルドな健康的食材。価格も安い。
買ってきたのはロールドオーツと呼ばれる、オーツ麦を蒸してローラーで平にして乾燥させたもの(写真)。これは普通水などに浸して加熱して食するものであるが、そんなことはせずそのまま食べてみた。最初はぱさぱさしていて味も無く、とてもそのままでは食べられたものではなかった。また失敗かと思ったが買ってきたものを捨てるわけにはいかないので減らすために食べ続けてみることにした。ロールドオーツをそのまま食べる人は居ないようだが、これを数日続けてみると意外に慣れてきた。ぱさぱさし過ぎるなら一緒に果物や牛乳なども摂ると食べやすい。よく噛んでいると中々独特な甘みも味わえてくる。一週間を過ぎると平気でそのまま食べられるようになった。
こういう物を食べていると仙人になったような気分になるが古代の人々の食生活もこんなものだったのだろうか?案外悪くないと思えるようになった。
オートミールを朝食にするようになって便通も改善された気がする。合うか合わないかは人によって違うだろうが、自分には案外相性が良いかもしれないので当面続けてみたい。
IC7300のALC ― 2025年01月20日
IC7300のALC
250120
IC7300でSSBを運用して感じることは、どうも平均出力が小さいのではないかという点。
もちろん、音声信号波形のピーク値(尖頭値)と平均値は10dB以上の開きがあって、平均出力電力が10%位であってもピーク電力は100%位出ているということは承知している。この平均出力を上げるには音声信号を圧縮して平均値を上げることであるが、IC7300の場合はスピーチコンプレッサ(音声信号圧縮器)を動作させてもそれほど平均出力が増加しない。最初は7300のスピーチコンプレッサが悪いのかと思い、色々設定を変えたりしてみたが改善されないので、もしかするとALC(Automatic Level Control:送信機の出力自動制御)の問題か?と思い当たった。
ALCは送信信号の出力レベルを規制する装置で、通常送信機の出力を検出して設定値以上になると途中増幅段のゲインをフィードバック制御して一定値内に抑え込む機能を有する。
しかし、SSBのエンベロープ(包絡線)波形は元の音声信号波形に対応していてピークと平均の値差が大きく、エンベロープのピークで出力を抑え込んでしまうと平均出力も出なくなってしまうという問題がある。
この問題は昔から議論されていて、古くは1968年頃、増幅型ALCというものが登場して、ケンウッド(当時はトリオ)のSSB送信機に採用された。これによりSSBの信号波形は綺麗になって帯域外までスプラッターが拡がるという問題も無くなった。しかしこのために送信出力の平均値も大きく下がってどうも信号が弱いという問題が顕著になった。当時、トリオと競合していた八重洲無線のSSB送信機は一部を除き、増幅型ALCは採用せず、旧来の整流型ALCに拘っていた。その理由は増幅型ALCは尖頭値で動作するものであるのに対し、整流型ALCは平均値で動作するものであったことによる。整流型ALCの原理は、送信機の終段管のコントロールグリッドがオーバードライブになってグリッド電流が流れだすとこのグリッド電流の交流分を検出して整流し、直流電圧を生成して途中増幅段の増幅度を下げるようにフィードバックする構造である。単なる整流回路で直流化してそれをCとRで構成する時定数回路で受けるため、サージ的なピーク電圧ではなく、出力の平均値変動に比例する平均値電圧となる。このため音声のピークではなく平均値に対してALCがかかるから結果として平均値をある程度上げることが可能であった。但しこのため、波形に歪が生じやすく、SSBの信号波形歪も若干増えて帯域外まで広がるスプラッターも増えることになる。当時の有名なALC論争ではトリオの増幅型ALCか八重洲の平均値ALCかが議論の一つになった。波形の上からは増幅型ALCが望ましいが、平均出力の点では平均値ALCのほうがトークパワーが高く取れる。八重洲無線は終段管のグリッド電流を全く流さないようにすることよりも、多少グリッド電流が流れてもその動作点まである程度の直線性を維持することで整流型平均値ALCを採用し、帯域外のスプラッターを許容値内に収めながら平均出力も高く維持するという実用的な方法を選択した。当時は八重洲無線がSSB技術で長じており、その論理が実用的であるようだった。
なぜこのような古い話を挙げたかというと、現在でも状況があまり変わっていないからである。
IC7300のALCは1968年当時のトリオの送信機と同様にピークを抑え込む尖頭値ALCであり、平均出力が低いのも同様である。
IC7300のALCはある意味優秀で、どんなに短いサージやピークでも完全に抑え込みを行う。この抑え込み電圧は発生後ある時間維持されてその間は送信出力が低下する。従って音声のピークのあとのエンベロープは低い振幅のままに抑えられるから平均値全体が低くなってしまう。つまりALCと言っても、音声のピークで出力レベル設定値を超えないようにレベル制限するだけで信号全体が低いレベルに抑え込まれるだけのものとなる。
これを解決するには瞬時のサージは無視するような時定数のALCにするしかない。そうすると今度は瞬時のサージが大きくなって波形歪の原因になるから、サージの抑え込みと平均値確保の両面を満足するような妥協値を見出すのがベストだろう。
この問題は以前も当ブログでIC7300の受信AGCの応答性の問題として挙げているが両方共本質的には同じ問題である。
一番望ましいのはスピーチプロセッサでサージを除いた圧縮度の高い音声エンベロープ波形を生成することかもしれない。
この問題についてネットを調べてみたが、ポーランドのSP3RNZのブログにALCの応答性を悪くする解決策があったので付しておく(#1)。
この種の改造は技適から外れる恐れと余計なスプリアスを生ずる恐れもあるので実行は勧められない。
参考文献
#1 Icom IC7300 average power MOD
https://sp3rnz.blogspot.com/2017/01/icom-ic-7300-ssb-power-mod.html
250120
IC7300でSSBを運用して感じることは、どうも平均出力が小さいのではないかという点。
もちろん、音声信号波形のピーク値(尖頭値)と平均値は10dB以上の開きがあって、平均出力電力が10%位であってもピーク電力は100%位出ているということは承知している。この平均出力を上げるには音声信号を圧縮して平均値を上げることであるが、IC7300の場合はスピーチコンプレッサ(音声信号圧縮器)を動作させてもそれほど平均出力が増加しない。最初は7300のスピーチコンプレッサが悪いのかと思い、色々設定を変えたりしてみたが改善されないので、もしかするとALC(Automatic Level Control:送信機の出力自動制御)の問題か?と思い当たった。
ALCは送信信号の出力レベルを規制する装置で、通常送信機の出力を検出して設定値以上になると途中増幅段のゲインをフィードバック制御して一定値内に抑え込む機能を有する。
しかし、SSBのエンベロープ(包絡線)波形は元の音声信号波形に対応していてピークと平均の値差が大きく、エンベロープのピークで出力を抑え込んでしまうと平均出力も出なくなってしまうという問題がある。
この問題は昔から議論されていて、古くは1968年頃、増幅型ALCというものが登場して、ケンウッド(当時はトリオ)のSSB送信機に採用された。これによりSSBの信号波形は綺麗になって帯域外までスプラッターが拡がるという問題も無くなった。しかしこのために送信出力の平均値も大きく下がってどうも信号が弱いという問題が顕著になった。当時、トリオと競合していた八重洲無線のSSB送信機は一部を除き、増幅型ALCは採用せず、旧来の整流型ALCに拘っていた。その理由は増幅型ALCは尖頭値で動作するものであるのに対し、整流型ALCは平均値で動作するものであったことによる。整流型ALCの原理は、送信機の終段管のコントロールグリッドがオーバードライブになってグリッド電流が流れだすとこのグリッド電流の交流分を検出して整流し、直流電圧を生成して途中増幅段の増幅度を下げるようにフィードバックする構造である。単なる整流回路で直流化してそれをCとRで構成する時定数回路で受けるため、サージ的なピーク電圧ではなく、出力の平均値変動に比例する平均値電圧となる。このため音声のピークではなく平均値に対してALCがかかるから結果として平均値をある程度上げることが可能であった。但しこのため、波形に歪が生じやすく、SSBの信号波形歪も若干増えて帯域外まで広がるスプラッターも増えることになる。当時の有名なALC論争ではトリオの増幅型ALCか八重洲の平均値ALCかが議論の一つになった。波形の上からは増幅型ALCが望ましいが、平均出力の点では平均値ALCのほうがトークパワーが高く取れる。八重洲無線は終段管のグリッド電流を全く流さないようにすることよりも、多少グリッド電流が流れてもその動作点まである程度の直線性を維持することで整流型平均値ALCを採用し、帯域外のスプラッターを許容値内に収めながら平均出力も高く維持するという実用的な方法を選択した。当時は八重洲無線がSSB技術で長じており、その論理が実用的であるようだった。
なぜこのような古い話を挙げたかというと、現在でも状況があまり変わっていないからである。
IC7300のALCは1968年当時のトリオの送信機と同様にピークを抑え込む尖頭値ALCであり、平均出力が低いのも同様である。
IC7300のALCはある意味優秀で、どんなに短いサージやピークでも完全に抑え込みを行う。この抑え込み電圧は発生後ある時間維持されてその間は送信出力が低下する。従って音声のピークのあとのエンベロープは低い振幅のままに抑えられるから平均値全体が低くなってしまう。つまりALCと言っても、音声のピークで出力レベル設定値を超えないようにレベル制限するだけで信号全体が低いレベルに抑え込まれるだけのものとなる。
これを解決するには瞬時のサージは無視するような時定数のALCにするしかない。そうすると今度は瞬時のサージが大きくなって波形歪の原因になるから、サージの抑え込みと平均値確保の両面を満足するような妥協値を見出すのがベストだろう。
この問題は以前も当ブログでIC7300の受信AGCの応答性の問題として挙げているが両方共本質的には同じ問題である。
一番望ましいのはスピーチプロセッサでサージを除いた圧縮度の高い音声エンベロープ波形を生成することかもしれない。
この問題についてネットを調べてみたが、ポーランドのSP3RNZのブログにALCの応答性を悪くする解決策があったので付しておく(#1)。
この種の改造は技適から外れる恐れと余計なスプリアスを生ずる恐れもあるので実行は勧められない。
参考文献
#1 Icom IC7300 average power MOD
https://sp3rnz.blogspot.com/2017/01/icom-ic-7300-ssb-power-mod.html
NHKスペシャル量子もつれ ― 2024年12月30日
NHKスペシャル12月28日放送の「量子もつれ アインシュタイン最後の謎」の録画しておいたものを先ほど観た。難しいけれど面白い。
量子もつれとは簡単に言えば粒子同士が同期する現象のこと。2つの粒子に量子もつれの関係が形成されると、粒子同士がどんなに遠くまで引き離されても2つの粒子が同期する。一方の粒子の状態が変化すると他方の粒子も瞬時に同期して変化するという現象。従って一方を測定すれば他方が遠方に離れていても相手の状態がわかることになる。
(この奇妙な現象については私も興味があって2019年5月21日付のこのブログ上に書いたことがある)
アインシュタインはこのような量子もつれを否定していた。当時は学会でも量子もつれ現象は否定的で、それを研究する人は立場を失っていくという禍々しいテーマだった。最初の頃ボームという人は次のような理論を提唱した。
スピン1重項状態にある2つの電子が分裂して、それぞれ反対方向に飛び出した時、離れた場所でスピンの方向を測ると一方が上向きなら他方は必ず下向き、一方が下向きなら他方は上向きと常に反対を向く。測定するまではスピンの方向は判っていないにも関わらず両電子がいくら遠くに離れても成立するという。
この理論は証明のしようがなく、結局無視された。
その後JSベルが、ベルの不等式という量子もつれの有無を判定する式を考案。それを基にしてクラウザーが光子を使ってその相関を実験的に調べることに挑んだ結果、ベルの不等式が破れるという実験結果が得られた。ベルの不等式が破れるというのは量子もつれが存在することを意味している。クラウザーは光子増倍管を使った5mくらいの実験装置を自作して量子もつれの存在証明実験を行った。予算が無いのでジャンク箱などを漁って部品調達したという。部品が欲しくてゴミ漁りや盗んでまで求めたという言葉にその夢中さを感じた。子供の頃、自作のための電子部品が欲しくて古物屋漁りして探し求めた経験がスケールは全く違うが重なった。
しかしクラウザーの実験はいくつか抜けがあり、完全な証明とはならなかった。その後、ツァイリンガーが宇宙の遠方からの光を偏光板で制御するという壮大な実験をして完全にベルの不等式の破れを証明した。これにより量子もつれの存在が証明された。クラウザーやツァイリンガーらはこの功績により。2022年度のノーベル賞を授与されている。
科学技術は常に権威者による否定に立ち向かう若き研究者によってその壁を打ち破る歴史が刻まれてきた。アインシュタインが否定した量子もつれという奇妙な現象の存在は証明されたが、なぜ量子もつれが生じるのかそのメカニズムはまだ不明であり、さらに将来の人に託されている。
量子もつれとは簡単に言えば粒子同士が同期する現象のこと。2つの粒子に量子もつれの関係が形成されると、粒子同士がどんなに遠くまで引き離されても2つの粒子が同期する。一方の粒子の状態が変化すると他方の粒子も瞬時に同期して変化するという現象。従って一方を測定すれば他方が遠方に離れていても相手の状態がわかることになる。
(この奇妙な現象については私も興味があって2019年5月21日付のこのブログ上に書いたことがある)
アインシュタインはこのような量子もつれを否定していた。当時は学会でも量子もつれ現象は否定的で、それを研究する人は立場を失っていくという禍々しいテーマだった。最初の頃ボームという人は次のような理論を提唱した。
スピン1重項状態にある2つの電子が分裂して、それぞれ反対方向に飛び出した時、離れた場所でスピンの方向を測ると一方が上向きなら他方は必ず下向き、一方が下向きなら他方は上向きと常に反対を向く。測定するまではスピンの方向は判っていないにも関わらず両電子がいくら遠くに離れても成立するという。
この理論は証明のしようがなく、結局無視された。
その後JSベルが、ベルの不等式という量子もつれの有無を判定する式を考案。それを基にしてクラウザーが光子を使ってその相関を実験的に調べることに挑んだ結果、ベルの不等式が破れるという実験結果が得られた。ベルの不等式が破れるというのは量子もつれが存在することを意味している。クラウザーは光子増倍管を使った5mくらいの実験装置を自作して量子もつれの存在証明実験を行った。予算が無いのでジャンク箱などを漁って部品調達したという。部品が欲しくてゴミ漁りや盗んでまで求めたという言葉にその夢中さを感じた。子供の頃、自作のための電子部品が欲しくて古物屋漁りして探し求めた経験がスケールは全く違うが重なった。
しかしクラウザーの実験はいくつか抜けがあり、完全な証明とはならなかった。その後、ツァイリンガーが宇宙の遠方からの光を偏光板で制御するという壮大な実験をして完全にベルの不等式の破れを証明した。これにより量子もつれの存在が証明された。クラウザーやツァイリンガーらはこの功績により。2022年度のノーベル賞を授与されている。
科学技術は常に権威者による否定に立ち向かう若き研究者によってその壁を打ち破る歴史が刻まれてきた。アインシュタインが否定した量子もつれという奇妙な現象の存在は証明されたが、なぜ量子もつれが生じるのかそのメカニズムはまだ不明であり、さらに将来の人に託されている。
晩秋の蚊 ― 2024年11月27日

1日の最低温度が外で7℃位、家の中で15℃位の季節になった。
この温度でもまだアカイエカらしき蚊が活動している。窓を閉めていても外の蚊は生き残りのため、玄関ドアの開閉の隙を縫って家の中に入ってくる。一旦侵入すると窓も網戸で遮蔽されているため外に出ていくことはなく、家の中に棲み続ける。このままだと夜寝ている時に血を吸いにやってきて厄介なので何とか始末したいが中々難しい。
昔は家が開放的で断熱も悪かったせいか秋になれば家の中からは消えた気がする。今時の家は密閉性と断熱性が良いので蚊にとって絶好の冬眠場所になった。
家の中の蚊は普段壁などに張り付いているが見つけるのは困難。ただ白い部分に止まる蚊は比較的見つけやすいが黒っぽい部分に止まっているのはまず発見できない。蚊によって好みがあるようで、白い部分に止まる蚊は逃げてもまた白っぽいところに止まる傾向がある。黒い部分に止まったほうが生き残りのチャンスが増えると思うのだが何故かそうとは限らないようだ。
壁に止まった蚊を手で潰そうとしてもまず逃げられる。これは蚊に近づく手による風の動きか体温による赤外線をキャッチして俊敏に逃げるようだ。うまく押さえ込めても掌の凹みの間に入ってすり抜けてしまうので、手ではなく雑巾のようなものを押し付けたほうが捕えやすい事を経験で学んだ。室温が下がると蚊の動きも鈍くなるので捉えやすくはなるがそれでも簡単には行かない。スプレーのようなものがあれば羽を濡らすことで簡単に落とせる。掃除機で吸い取るのも一方法。電気蚊取は除虫菊の成分と同じものを蒸散するが、弱いので蚊が逃げる程度の効果しかない。
蚊は普段目に映りにくいが、一匹いるということは数匹以上いると考えたほうがよい。蚊の活動する気温は20度以上と言われているが15℃程度でも飛び回れる。更に室温が低下すると完全に活動を停止して家の中の暗い部分で冬眠するようである。以前、綿埃の中で冬眠している蚊を偶然発見したこともある。
見つけるには普段注意深く周囲の壁などを観察するしかない。室温20℃近くになると活動度が上がるので耳の近くを飛ぶ蚊の羽音で存在が判る。このような時は必ず近くに止まるので発見しやすい。
かくして蚊と人間の闘いは続く。
この温度でもまだアカイエカらしき蚊が活動している。窓を閉めていても外の蚊は生き残りのため、玄関ドアの開閉の隙を縫って家の中に入ってくる。一旦侵入すると窓も網戸で遮蔽されているため外に出ていくことはなく、家の中に棲み続ける。このままだと夜寝ている時に血を吸いにやってきて厄介なので何とか始末したいが中々難しい。
昔は家が開放的で断熱も悪かったせいか秋になれば家の中からは消えた気がする。今時の家は密閉性と断熱性が良いので蚊にとって絶好の冬眠場所になった。
家の中の蚊は普段壁などに張り付いているが見つけるのは困難。ただ白い部分に止まる蚊は比較的見つけやすいが黒っぽい部分に止まっているのはまず発見できない。蚊によって好みがあるようで、白い部分に止まる蚊は逃げてもまた白っぽいところに止まる傾向がある。黒い部分に止まったほうが生き残りのチャンスが増えると思うのだが何故かそうとは限らないようだ。
壁に止まった蚊を手で潰そうとしてもまず逃げられる。これは蚊に近づく手による風の動きか体温による赤外線をキャッチして俊敏に逃げるようだ。うまく押さえ込めても掌の凹みの間に入ってすり抜けてしまうので、手ではなく雑巾のようなものを押し付けたほうが捕えやすい事を経験で学んだ。室温が下がると蚊の動きも鈍くなるので捉えやすくはなるがそれでも簡単には行かない。スプレーのようなものがあれば羽を濡らすことで簡単に落とせる。掃除機で吸い取るのも一方法。電気蚊取は除虫菊の成分と同じものを蒸散するが、弱いので蚊が逃げる程度の効果しかない。
蚊は普段目に映りにくいが、一匹いるということは数匹以上いると考えたほうがよい。蚊の活動する気温は20度以上と言われているが15℃程度でも飛び回れる。更に室温が低下すると完全に活動を停止して家の中の暗い部分で冬眠するようである。以前、綿埃の中で冬眠している蚊を偶然発見したこともある。
見つけるには普段注意深く周囲の壁などを観察するしかない。室温20℃近くになると活動度が上がるので耳の近くを飛ぶ蚊の羽音で存在が判る。このような時は必ず近くに止まるので発見しやすい。
かくして蚊と人間の闘いは続く。
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