ダスト18(手塚治虫)2022年06月21日

表題の漫画(発行:立東舎)を読んでみた。設定が映画ファイナルデスティネーションとそっくりだったので最初は映画からヒントを得た漫画なのだろうと思った。ダスト18では飛行機事故で亡くなるはずだった18人が生命の石で生き残った。しかし死ぬ運命に決められていたものが生き延びることは許されないと運命を操る神?の手が生き残った人々の命を奪おうとする。一方、映画ファイナルデスティネーションは飛行機事故を予知して回避した若者たちが逃れられない死の運命にさらされる。どちらも人間の寿命は決まっていて変えることは許されないという運命論的死生観に基づいている。 
映画の公開年を調べたら2000年で原作は無いようだ。 漫画のダスト18はそれより28年前の1972年に少年サンデーに連載された。従ってダスト18は映画の真似ではなく手塚治虫のオリジナルストーリーと判断できる。どちらかと言えば映画の方がダスト18をヒントにした可能性もあって手塚治虫の先見性と天才性を物語っている。まあ、落語の死神でも同じような死生観が語られるからこのような考え方は独立的に発想されるのかもしれないが。ダスト18の巻末にも映画との類似性については述べられており偶然的に一致したと判断されているようだ。解説によればこの漫画は不人気なため予定よりも早く打ち切られてしまった。当時は全共闘の学生好みの劇画が流行っていた頃で手塚を含む多くの漫画家にとって不遇な時代だったという。手塚作品には命を題材にしたものが多く、手塚治虫は一貫して生と死について描き続けてきたと言えるだろう。本作はそんな手塚作品の中で埋もれていた秀作の一つである。