5G技術の光と影2019年09月01日

技術というものは時と共に進歩する。技術の進歩(変化)には原理の変化と規模の変化(増大)がある。前者には例えば真空管からトランジスタへの変化や石油ランプから電灯への変化などがある。後者はCPUのクロック速度の高速化やメモリー容量の増大などのように根本原理は変わらないが性能を引き上げていく改良技術である。技術は前者のような原理の変化が起きた時に大きく変わり、その後は同じ原理での小型化や集積化・高速化などのような後者の競争となる。前者には個人の高い創造性が必要となり、後者は個人よりも集団の力による創造力や競争力が決め手となる。従って後者は中国やインドのような人口の多い国がますます力を発揮していくことになる。通信技術の5Gは後者の技術である。電波を使う通信技術はヘルツが発明して以来、根本原理に変化はなく、その周波数がどんどん高くなっていった。携帯通信回線もやっとLTE(4G)が普及したと思ったらもう5Gという話になっている。4G回線と5G回線の違いは周波数(波長)が高く(短く)なるだけである。しかしこれにより一定時間に伝送できる通信容量が飛躍的に増大する。自動車の自動運転などのためにはこの通信容量の増大を必要としているから5Gは夢の技術を支える未来の必須インフラと捉えられるのは間違いではない。その一方5Gは4Gと比べて波長が約十分の一程度に短くなる。具体的には波長が1cm台となる。テレビの衛星放送の波長が大体その3倍程度であるからいかに短いかがわかる。衛星放送が大雨で見えなくなるのは雨粒に電波が吸収されるためであり、波長が短くなるとその傾向はもっと顕著になる。また電波は波であるから邪魔物があってもそのエッジで新たな波が生成されて放射し、邪魔物を乗り越えるように伝播できる。これを回折現象と呼ぶが、回折は波長が短くなるほど起こりにくくなる。5Gでは建物などの邪魔物で遮蔽されて伝わりにくい。これを対策するには無数の中継器を置くしかない。原理的には中継器の設置密度を無限に上げればサービスエリアは拡大するのだが、それには経済的な問題などがあり現実的ではない。車の自動運転も結構だが、これを支えるのに5Gを使えば、それこそ道路の全てに中継器が必要になってしまう。衛星回線を使えばカバーできるだろうが、悪天候などによる通信障害を許容しなければならないし、衛星も沢山用意する必要があり、宇宙がますますゴミだらけとなる。結局5G技術という贅沢な技術を広めようとすればとんでもない犠牲も必要になる。4Gはほぼ全国に普及するようになってきたが、5Gは都会以外への普及が難しい。5Gのような高い周波数の技術自体は別に画期的なものではなく、限定的な用途に既に沢山用いられている。5Gはそのような限定された範囲で威力を発揮するだろう。しかし、それを拡大して何にでもどこでも使うよう広める事には疑問がある。耳当たりの良い新技術という言葉に騙されないようにする判断力が必要だ。

古墳に立ち寄る2019年09月02日

今日も涼しいので近くの粕川土手を自転車で散歩。伊勢崎市本関町の辺りに古墳があって以前から気になっていたので立ち寄ってみた。土手の端にあり、小さな公園になっていた。名称は一ノ関古墳で説明書きによるとおよそ50mの前方後円墳だが粕川により浸食されて今は全長28mの墳丘部分のみ残っている。写真は後円部で横穴式石室に入れる入り口がある。石室まで入れるようだが中まで入ってはみなかった。時代は6世紀後半でこの地域の中心的人物を埋葬した古墳と考えられている。伊勢崎市にも古墳が多い。以前家の前に新しい道路が通って土地を収容された時も埋蔵物が出てきて発掘作業が行われた。結果は古代住居跡とのことであり、特別なものは出なかったがまさか自宅が古代住居跡だったとは思わなかった。

中波AM放送廃止に思う2019年09月04日

今年の3月に民放連から具申された中波AM放送のFM放送への転換がこのほど総務省の有識者会議で容認の方向となった。この結果2028年までに中波のAM民間放送はFMに一本化していく。その理由は中波放送の聴取率が下がり、経営環境が悪化したことによる。中波放送は波長が長いため巨大な送信アンテナが必要となり、そのための送信所の土地の確保やアンテナなどの設備保守に大きな経費がかかる。FMラジオ放送網が充実し、ネットラジオなども普及した現代では中波放送がその役目を終えるのは仕方ないことだろう。一方、昔の子供たちの多くはこのAM放送を聞くため、ゲルマニウムラジオというものを作って楽しんだ。子供たちが科学に興味を持つきっかけにもなったゲルマニウムラジオは消えて欲しくないがこれは当分心配する必要はなさそうだ。NHKは基幹放送としてAM放送を継続する方針のようなので、第一第二放送は今後も残りそうだからAMの灯は消えないだろう。 
ところでゲルマニウムラジオでなぜAM放送を聞くことができるのかについては案外難しい。大雑把に言うと、AMとはAmplitude Modulation(振幅変調)の略であり、高周波の交流(搬送波という)の電圧振幅に音声などの低周波信号振幅を重畳(これを変調という)させることで情報を乗せて電波として送信する。この高周波の交流をダイオードで整流すると直流が得られる。この直流には音声などの低周波信号が重畳されているため、これから直流成分と高周波成分を取り除くと低周波成分だけが得られて復調される。この低周波成分が高周波に重畳された波形を包絡線と言い、AM波から包絡線部分を取り出す検波方式を包絡線検波と呼ぶ。包絡線検波は簡易的な検波方式であり、厳密に言うとダイオードの整流特性の非直線部分で歪が発生するがその簡単さから広く用いられてきた。昔どの家にもあった5球スーパーラジオも同じ検波方式が使われている。ゲルマニウムラジオはとても簡単な回路であるが、アンテナや並列共振回路、包絡線検波、電気⇔機械エネルギー変換などの電子回路の基本を学ぶのに有用な教材である。将来いつまでもAM放送が残り続けて欲しいものだ。

EU離脱と餓死したロバ2019年09月05日

ブレグジット問題(英国のEU離脱問題)は3年間も進展せず宙ぶらりんの状態である。これは飢え死にしたロバの話と似ている。今から50年以上前に発行された 物理の散歩道(岩波書店)という本の中に「ロバはなぜ死んだ」という章がある。乾草の山を目の前に見ながら餓死したロバの話で、有名な話のため聞いたことのある人も多いだろう。腹を空かしたロバが、乾草の山が2つあるのを見つけた。早速食べようと思ったが2つとも全く同じ大きさ、同じ距離にあって、どちらの方を食うか決められないままとうとう餓死してしまった。物理の散歩道でこれを扱ったのは、この話が実際に起こりうるかという投げかけである。この話はむろんたとえ話だし、そんな馬鹿げたことが起こるとは誰も考えはしない。しかし問題はこの話のようなことが起こることが数学的に可能か?言い換えると確率がゼロでない値をとるか否かということだ。この本の中では、そのようなどっちつかずの状態や領域は物理現象でも実際に起こり得るが、運悪くそこに当たると均衡状態になり、どちらかに決着をつけるのに余計な時間がかかるという。例えば、どちらかの方向に倒れる棒が立っているとし、うまくバランスした状態が出来ると、倒れるために少しずつバランスを崩すのに時間がかかる。コンピュータでもAD(Analog Digital)変換器をつけた場合、数値の境目でどちらにするか決められない場合があってコンピュータが一瞬考えこむことがあるという。実際にはこうならないように中途半端の場合を絶対に作らないよう設計するそうである。いずれにしても、ロバが死ぬような事象は起こり得るということだ。英国のEU離脱も国民投票で賛成が50%を僅か上回るという均衡に近い状態で決定された。しかし賛成と反対が半々に近い状態というのはまさにどっちつかずの領域に入っている。しかも離脱条件も選択肢を選びかねるような不安定さである。つまりEU離脱という命題はどっちつかずの領域がかなり広いと言える。この結果、どの方法を選ぶか決めかねて3年も時間が過ぎてしまった。ロバならとっくに餓死している。このような場合、物理の散歩道には解決策としてサイコロを振る方法が挙げられている。ブレグジット問題もサイコロを振って決めたほうが余程合理的かもしれない。そんな方法は愚かだと言うかもしれないが、そもそも国民投票に安易に委ねた事が愚かだったのではないだろうか。

アンテナの積み重ねの影響2019年09月08日

現在使っているHF用アンテナはSteppIRという14MHz~50MHzまでの八木アンテナ。エレメントはモータで長さ調整できるので6バンドを一つのアンテナで済み、各バンドが3素子のフルサイズ八木アンテナとして動作する。この方式の最大の強みはアンテナ1本で済むという点から多数のアンテナを重ねて使う方式のようなお互いの干渉による性能劣化がない点にある。しかし弱点は機械的に複雑であり、故障しやすく寿命も短めなところだ。このアンテナが壊れたら次は壊れにくい単純なアンテナにしようと思うのだが、周波数は色々なバンドに出たい。そのためには複数のアンテナを重ねて使うしかなく、相互干渉の問題が生ずる。これがどのくらい問題となるのかは判断が難しい。そこでアンテナシミュレーション計算をしてみた。使いたいアンテナはCreative Designの214Aという14 MHz/21MHzの2バンド八木と248Aという18MHz/24MHzの2バンド八木。この2つを3.5mの間隔で重ねた場合の性能劣化を試算してみた。計算に使ったアンテナモデルは自分で作成したので実物との誤差はある程度許容し、あくまでも相対比較として絶対誤差は重視していない。ソフトはMMANAを使い、自由空間でシミュレーションしてみると次のようになった。

アンテナ/周波数MHz/利得dBd / FB比dB/ 垂直面放射角deg
214A 単体/ 14.15/ 4.71/ 26.21/ 0
214A 単体/ 21.2 / 6.43/ 12.13 / 0

248A単体/ 18.12 /4.64/ 24.88/ 0
248A単体/ 24.94/ 6.06/ 16.61/ 0

214A+248A / 14.15/ 4.54/ 22.91/ 0
214A+248A / 21.2/ 6.43/ 12.89/ 2
214A+248A / 18.12/ 4.52/ 26.35/ 8
214A+248A / 24.94/ 5.45/ 18.14/ 0

以上は計算結果の一部の例であるが、積み重ねは単体よりもやはり性能劣化が生ずる。影響は、大きい方のアンテナは少なく、小さい方はやや影響大。24MHzでの利得低下が一番大きく、他のバンドは殆ど利得低下を起こしていない。放射角度は18MHzが影響大である。このため実際の地上の影響を受けた場合の打ち上げ角度がどうなるのかを更に計算したが、打ち上げ角度は18MHzで1度くらい悪化するだけで殆ど無視できる結果だった。今回試算した結果は、HFハイバンドでアンテナを積み重ねてもお互いの間隔を3.5m程度確保すれば一番高い周波数で若干性能が落ちる以外はほぼ問題ないものだった。アンテナを計画する時にシミュレーションを使えば設置条件の影響を事前に推定できるので有用と言える。

インピーダンス整合の重要性2019年09月11日

以前アンテナフィーダーのSWR(定在波比)について書いた。アンテナはSWRが多少高めでもそれほど損失にはならない。一般的にSWRが2以下であればあまり損失を気にする必要はない。しかし送信機から最大の電力を送り込むという観点だと話は別になる。送信機側を高周波電源と見做した場合、その等価回路は電圧源Eと内部インピーダンスZt=Rt+jXtの直列回路になる。これにアンテナフィーダーからの負荷Z=R+jXをつなぐとオームの法則から送信機の出力電流IはI=E/(Zt+Z)となる。従って負荷側の純抵抗分Rで消費される電力P=RI²となる。RI²=E²R/((Rt+R)²+(Xt+X)²)となるから結局R=Rt, X=-Xtのときに最大電力Pmax=E²/(4Rt)を送信機の負荷に送り込めることになる。つまり送信機の内部インピーダンスZtに対し負荷Zが複素共役のZ=Rt-jXtになった時に最大電力を送り込める。従って負荷Z=R+jXをR→Rt ,X→-Xt に変換してやらないとアンテナに最大電力を送り込めないことになる。このインピーダンス変換R→Rt ,X→-Xt を行う装置がアンテナチューナーである。現在市販されている送信機(トランシーバ)は出力インピーダンスZt=50Ω+j0Ω=50Ωに決められているので負荷インピーダンスZ=R+jX (R≠50、X≠0)のままでは電力をうまく送りこめない。そこで間にチューナを介在させてR=50、X=0に変換してやれば送信機側から最大電力を負荷に送り込める。これをインピーダンスマッチング(整合)と呼ぶ。昔の真空管式の送信機ではインダクタンスと可変キャパシタンスをπ型に配列したパイマッチなどの整合回路を内蔵しており、負荷が複素共役になるようにある程度インピーダンスの調整ができたからSWR=2であっても問題なく動作できた。しかし現在のソリッドステートの送信機ではインピーダンスが50Ωに固定されているからたとえSWR=2であっても最大の電力を送り込めない。このためアンテナチューナが役に立つのである。もちろんアンテナチューナ自体に必ず損失があるのでSWR=1に近いならチューナを通すことは損失を増やすだけで無駄である。しかしSWRが2以上なら必ずチューナを通すべきである。特に送信機によってはSWRが上がると保護回路を働かしてパワーダウンさせるのでこの視点でもチューナが重要となる。電力増幅回路のインピーダンス整合は歪を発生させないためにも守らなくてはならない。だから一部で言われるチューナ否定は現実論の中では必ずしも正しくないと言えるだろう。

オゾン層問題2019年09月15日

近年ますます日焼けしやすくなった気がする。また日に当たる物の色褪せが早い気もする。感覚的にだが太陽から地球に注ぐ紫外線が増加していないだろうか?紫外線を吸収してくれているのはオゾン層であるが、合成冷媒フロンの登場によりオゾン層破壊が問題となった。フロン(フレオン)は米国のデュポン社などにより生産された冷媒だが、当初はそれまで使われていたアンモニアに代わるものだった。アンモニアは効率の良い冷媒であったが爆発性や毒性の問題があり、多くの人が事故で亡くなる危険な冷媒で、フロンの出現はその安全性・安定性が人命を救う理想の冷媒と称えられた。しかし、80年代初めに南極でのオゾン層観測からオゾンホール拡大が明らかとなった。その後その原因が塩素を含むフロンによるものと判明し、塩素を含むフロンは急速に国際的な全廃の方向に変わった。塩素を含むフロン(CFCやHCFC)は塩素を含まない代替フロン(HFC)例えばR134aなどに置き換えられたが、次に地球温暖化の問題が浮上し、代替フロンはオゾン破壊係数(ODP)がゼロであっても地球温暖化係数(GWP)はまだ高いため、撤廃の方向に進んでいる。南極のオゾンホール拡大もフロン規制の効果で収まりつつある。アンモニアがまず悪者となり、次に出た正義のフロンが副作用という点で実はもっと悪者で、今はアンモニアが地球に優しい自然系冷媒として再評価されるのは科学技術の発展過程によくある皮肉な話である。
オゾン破壊係数(ODP)の高い冷媒は全廃の方向となり、オゾン層問題は解決したかのように思えた。しかし環境省の紫外線強度推移の統計を見ると、相変わらず上昇傾向が有意と判定されている。紫外線が強くなったという感覚もあながち間違いではないようだ。もちろん過去に放出した高ODP物質の影響はすぐに収まるものではないし影響物質は他にもあるが、それにしてもCFCが途上国も含め全世界で全廃後大分経過しているのに紫外線は相変わらず増加傾向にある。これは世界のどこかでまだ隠れてCFCかその類似ガスが作られ、放出されている可能性を示している。最近では中国で断熱材の発泡用にODPの非常に高いR-11が大量に使われていることが判明している。世界のどこかで空調や発泡、洗浄などの用途にCFC/HCFC等がまだ大量に作られ、使われ続けている可能性があるかもしれない。

五輪会場の人工降雪実験2019年09月17日

日本人のレベルがここまで低下しているとは思わなかったというニュースだった。
9月13日、東京五輪大会組織委員会が人工雪を降らせる実験を行った。暑さ対策として東京の海の森水上競技場で氷300㎏を粉砕して雪を降らせた。結果はこの日の気温25.1℃に何の影響も与えなかった。

大雑把に試算してみると、0℃の氷300㎏を0℃の水にする時の融解潜熱は約10万kJであり、0℃の水300㎏を25℃に上げる顕熱は約3万kJだから合計で13万kJである。この熱量をエアコンの冷凍能力と簡単に比較してみる。エアコンで1時間当たりの冷却熱量13万kJを得るには約36kWの能力を要する。成績係数(COP)を4とすれば9kWほどの消費電力のエアコンを1時間ほど働かせたものに相当する。これは大きめの家庭用エアコン数台分か業務用エアコン1台程度の冷却能力に過ぎない。この程度の能力でどうやって開放的な五輪会場の気温を下げようというのだろうか?こんな馬鹿げた実験に税金を無駄に捨てている組織委員会とは一体どんな組織なのだろうか?日本が今後、国力を低下させて世界の最貧国へと向かう未来が見える気がする。

地球環境問題2019年09月27日

スウェーデンの16歳の高校生グレタさんによる国連気象サミットでの演説が世界で話題になっている。その一部を抜粋「We are in the beginning of a mass extinction. And all you can talk about is money and fairytales of eternal economic growth.:私たちは絶滅に差し掛かっているのに、あなたたちが話すのは金のことと、永遠の経済成長というおとぎ話だけだ」 大人の一人として確かにその通りと認めざるを得ない。
今、世界人口の10%の富裕層だけで個人消費による温室効果ガスの50%を排出しており、その一方世界人口の半分に当たる貧困層の排出量は10%以下に過ぎないという。恐らく私たち日本人も多くの温室効果ガスを排出する上位にいるのではないだろうか。産業革命以降世界の平均気温は約1℃上昇しており、このまま何もしなければ2100年には4℃を超える。2015年のパリ協定ではこれを2℃以下で可能な限り1.5℃に抑えることを目標とした。この目標に対し何も行動しない大人たちに対しグレタさんは冒頭の言葉を投げつけた。人類は商業主義による経済競争に明け暮れて環境を顧ないで来た。自由経済競争は資源を枯渇するまで掘り続け、環境を蔑ろにして人類を滅亡へと向かわせている。ソ連の社会主義が崩壊したとき、人々は資本主義の勝利を一時感じたが、その資本主義による経済成長は必ず行き詰まる時を迎える。経済優先による環境破壊は思ったよりも早く迫っている。社会主義の崩壊によって唾棄されたマルクスの資本論だが、持続可能な社会システムの再構築という点で見直されてきているようだ。いまのままの社会・経済システムで平均気温の上昇を1.5℃に抑えるのは不可能であり、全く新しい社会システムや価値観に変わることが必要になるだろう。それがどんなものなのかは想像がつかない。日本では3.11の大地震により原発による発電がほぼ不可能になってしまった。しかし再生可能エネルギーによる発電も温暖化対策としての効果に疑問がある。温暖化ガス抑制という点で原発は強力な手段の一つであり、恐らくこれ無しでは温暖化抑制が不可能だろう。悪魔の火である原発でなければ温暖化には対処できないという不条理を日本国民が直視しなければならない選択の時が来るのかもしれない。また、スーパーなどの駐車場でエンジンをかけっ放しの車のなんと多いことか。いっそガソリンの価格を今の10倍にしたら少しは抑制できるかなどと不遜なことを思う今日この頃である。

電気自動車2019年09月29日

資源枯渇、大気汚染、温暖化などの環境破壊の大きな原因となっているのが自動車である。それは殆どの自動車が化石燃料をエネルギー源とする内燃機関によって動くことによる。そこで未来の車として電気自動車が脚光を浴びている。電気自動車は実は内燃機関自動車より以前からあった。それ自体は何の難しさもない概念だが難点は電池だった。当初はバスなどに用いられたが当時の鉛蓄電池では航続距離が圧倒的に不足して電動バスは早期に消えた。その後も鉛蓄電池を用いた電気自動車は何度も現れては消え、近年になってリチウムイオン電池により航続距離も伸びるようになり、将来への希望も見えてきた。しかし、電池の進歩を見ているとまだまだ実用化には遠い気がする。素人があまりネガティブなことを言いたくはないが、電気自動車に未来は本当にあるのだろうか?そもそも電気自動車には燃料電池の実用化が必須だった筈。私が小学生の頃読んだ「子供の科学」に、実用化間近な燃料電池として解説記事があったのを覚えている。あれから60年も過ぎて燃料電池は今なお普及もしていない。リチウムイオン電池は優れた充電池であるが、それではまだ電気自動車の課題を解決できない。電気自動車は走っている途中でいつ電池切れになるかという重大な不安を抱えている。そして充電に必要な時間もまだ長い。確かに新車のうちは結構な航続距離が達成できるだろうが、充放電を繰り返すうちに電池は急速に劣化し、車の航続距離もみるみる減少して車としての実用性を失う。そのうえ電池のコストはべらぼうに高いためそう頻繁に交換はできない。さらに電気自動車では内燃機関のような熱源がないため、冬季の暖房はヒートポンプシステムを使わざるを得ない。ヒートポンプは外気から熱をくみ上げる逆カルノーサイクルだが、外気温と内気温との差が大きいほどカルノーサイクルの効率は低下する。このため少しでも成績係数(COP)を高くできる二酸化炭素を冷媒にしたサイクルを用いるがこれにしても寒冷地では効率が低下する。このヒートポンプは電気で動く圧縮機を用いるため相当な電気を食い、航続距離をさらに低減させる要因となる。夏季の冷房についても熱交換が逆転するだけで、空調には大きな電力が消費される。航続距離の低下により、犯罪者を追いかけていた米国の電動パトカーが途中で電池切れで動けなくなるなどの笑えるトラブルも起きている。今のまま電気自動車が普及すれば各地で毎日電池切れレスキュー出動騒ぎが繰り返されるだろう。生命に関わる問題も生じるかもしれない。今のところ電池の問題を解決できるのはエンジン発電機を積んだハイブリッド車しかない。しかしこれはあくまでもガソリンを使う車であり電気自動車ではない。電気自動車に対し悲観的なことを書いたが否定しているわけではなく、ガソリン車と置き換わってくれることを切望している。そのためにはまだ相当高い壁を乗り越えなければならず、その方法がまだ見えないように思えるのである。