中波AM放送廃止に思う2019年09月04日

今年の3月に民放連から具申された中波AM放送のFM放送への転換がこのほど総務省の有識者会議で容認の方向となった。この結果2028年までに中波のAM民間放送はFMに一本化していく。その理由は中波放送の聴取率が下がり、経営環境が悪化したことによる。中波放送は波長が長いため巨大な送信アンテナが必要となり、そのための送信所の土地の確保やアンテナなどの設備保守に大きな経費がかかる。FMラジオ放送網が充実し、ネットラジオなども普及した現代では中波放送がその役目を終えるのは仕方ないことだろう。一方、昔の子供たちの多くはこのAM放送を聞くため、ゲルマニウムラジオというものを作って楽しんだ。子供たちが科学に興味を持つきっかけにもなったゲルマニウムラジオは消えて欲しくないがこれは当分心配する必要はなさそうだ。NHKは基幹放送としてAM放送を継続する方針のようなので、第一第二放送は今後も残りそうだからAMの灯は消えないだろう。 
ところでゲルマニウムラジオでなぜAM放送を聞くことができるのかについては案外難しい。大雑把に言うと、AMとはAmplitude Modulation(振幅変調)の略であり、高周波の交流(搬送波という)の電圧振幅に音声などの低周波信号振幅を重畳(これを変調という)させることで情報を乗せて電波として送信する。この高周波の交流をダイオードで整流すると直流が得られる。この直流には音声などの低周波信号が重畳されているため、これから直流成分と高周波成分を取り除くと低周波成分だけが得られて復調される。この低周波成分が高周波に重畳された波形を包絡線と言い、AM波から包絡線部分を取り出す検波方式を包絡線検波と呼ぶ。包絡線検波は簡易的な検波方式であり、厳密に言うとダイオードの整流特性の非直線部分で歪が発生するがその簡単さから広く用いられてきた。昔どの家にもあった5球スーパーラジオも同じ検波方式が使われている。ゲルマニウムラジオはとても簡単な回路であるが、アンテナや並列共振回路、包絡線検波、電気⇔機械エネルギー変換などの電子回路の基本を学ぶのに有用な教材である。将来いつまでもAM放送が残り続けて欲しいものだ。

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