フェルミのパラドックス2020年02月08日

地球のような惑星が宇宙に多く存在するなら知的生命体は宇宙に多く存在し、その中のいくつかは地球に到達している筈であるのに彼らはどこにいるのか?という疑問はフェルミのパラドックスと呼ばれている。これに対する解釈は幾つもある。その中で、そもそも地球以外には知的生命体は存在しないという説がある。これを裏付けるような計算結果が最近、東京大学の戸谷教授から発表された。
宇宙で生命がどのように発生するのか。高度な遺伝情報を持った生命体が生物のまだ存在しない状態から偶発的に生まれる確率は極めて小さいと考えられてきた。一方宇宙は地球から観測可能な距離138億光年のさらに彼方まで拡がっていることが分かっている。この広大な宇宙のどこかで生命が生まれたことは、今この地球上に生命体が存在することから自明である。生命が存在しなかった頃の宇宙にどのようにして生命体が生まれたのか?生命の起源に関して有力なのはRNAである。地球上の生物は遺伝情報を主としてDNAが持ち、代謝などは蛋白質が担っている。RNAはその2つの機能を1つで持っていることから最初の生命はRNAから始まったという説である。しかし生命活動ができるほどの複雑な分子連鎖を持つRNAが偶然できる確率は低過ぎて実際には起こり得ないとされてきた。インフレーション宇宙論によれば宇宙は138億光年を超えて拡がっている。一方生命誕生に必要な長さのRNAはヌクレオチドと呼ばれる分子が最低でも40個以上程度繋がる必要があると言われている。戸谷教授は、生命体の存在しない地球型惑星でヌクレオチドがランダムに結合し、生命誕生に必要な長さと情報配列を持つRNAが生まれる確率と、宇宙の中の星の数を結びつける方程式を作った。これで計算した結果40個の情報配列を持つRNAが偶然生まれるためには宇宙の星が10の40乗個ほど必要になることが分かった。一方、観測可能な宇宙の範囲における星の数は10の22乗個程度に過ぎない。この範囲を超えた宇宙の拡がりを含めてやっと1つの偶然が生まれるという計算結果だった。地球上の全ての生命は同じ起源の1つの原始単細胞から始まったことがその遺伝子配列から分かっている。これらの結果から138億光年程度の範囲の宇宙では知的生命体どころか原始的生命が生まれる可能性は現在の地球の生命体以外の起源のものはないという推論が生まれる。ただ今回の計算の前提としたランダムな反応による以外の別プロセスがありうるとすればその確率は変わってくるようだ。
出典:https://www.nature.com/articles/s41598-020-58060-0

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