Neanderthal DNA2020年02月02日

プリンストン大のLu Chenらが最近Cell誌に発表した論文はネアンデルタール人のDNAに関する従来の学説を覆すものだった。従来の説では6万年位前にアフリカを出たホモサピエンスはユーラシア大陸に渡りネアンデルタール人と混血した。その結果現代人の遺伝子にはヨーロッパ人とアジア人に2%くらいのネアンデルタール人のDNAが残っているがアフリカ人にはネアンデルタール人のDNAは無いというものだった。しかし、今回ChenらはIBDMixという新しい遺伝子解析法を開発した。この方法によれば、ヒトゲノムは30億個の塩基対から成っているがヨーロッパ人はネアンデルタール人のDNAと一致する5100万個の塩基対を持ち、アジア人は5500万個を持つ。そしてアフリカ人は1700万個を持っていることが判明した。これはホモサピエンスとネアンデルタール人との交配に関する従来の予測と全く異なるものだった。今回の結果から次のような流れが考えられる。アフリカに住むサピエンス人達はおよそ20万年ほど前にアフリカからユーラシア大陸に渡り、ネアンデルタール人と遭遇し一部交配した。その人たちの一部はその後再びアフリカに戻って純粋種のサピエンス人と交配することで全てがサピエンス人とネアンデルタール人の混血種となり純粋なサピエンスは居なくなった。人類の移動は一方向の伝播ではなく、20万年の間何度も行き来が繰り返されることで現代人のDNAは従来考えられていたものよりずっと似通ったものになった。外見は人種によって大きく異なっても中身は人種間で殆ど違いがないと言えるだろう。

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