インピーダンス整合の重要性2019年09月11日

以前アンテナフィーダーのSWR(定在波比)について書いた。アンテナはSWRが多少高めでもそれほど損失にはならない。一般的にSWRが2以下であればあまり損失を気にする必要はない。しかし送信機から最大の電力を送り込むという観点だと話は別になる。送信機側を高周波電源と見做した場合、その等価回路は電圧源Eと内部インピーダンスZt=Rt+jXtの直列回路になる。これにアンテナフィーダーからの負荷Z=R+jXをつなぐとオームの法則から送信機の出力電流IはI=E/(Zt+Z)となる。従って負荷側の純抵抗分Rで消費される電力P=RI²となる。RI²=E²R/((Rt+R)²+(Xt+X)²)となるから結局R=Rt, X=-Xtのときに最大電力Pmax=E²/(4Rt)を送信機の負荷に送り込めることになる。つまり送信機の内部インピーダンスZtに対し負荷Zが複素共役のZ=Rt-jXtになった時に最大電力を送り込める。従って負荷Z=R+jXをR→Rt ,X→-Xt に変換してやらないとアンテナに最大電力を送り込めないことになる。このインピーダンス変換R→Rt ,X→-Xt を行う装置がアンテナチューナーである。現在市販されている送信機(トランシーバ)は出力インピーダンスZt=50Ω+j0Ω=50Ωに決められているので負荷インピーダンスZ=R+jX (R≠50、X≠0)のままでは電力をうまく送りこめない。そこで間にチューナを介在させてR=50、X=0に変換してやれば送信機側から最大電力を負荷に送り込める。これをインピーダンスマッチング(整合)と呼ぶ。昔の真空管式の送信機ではインダクタンスと可変キャパシタンスをπ型に配列したパイマッチなどの整合回路を内蔵しており、負荷が複素共役になるようにある程度インピーダンスの調整ができたからSWR=2であっても問題なく動作できた。しかし現在のソリッドステートの送信機ではインピーダンスが50Ωに固定されているからたとえSWR=2であっても最大の電力を送り込めない。このためアンテナチューナが役に立つのである。もちろんアンテナチューナ自体に必ず損失があるのでSWR=1に近いならチューナを通すことは損失を増やすだけで無駄である。しかしSWRが2以上なら必ずチューナを通すべきである。特に送信機によってはSWRが上がると保護回路を働かしてパワーダウンさせるのでこの視点でもチューナが重要となる。電力増幅回路のインピーダンス整合は歪を発生させないためにも守らなくてはならない。だから一部で言われるチューナ否定は現実論の中では必ずしも正しくないと言えるだろう。

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