放射冷却の利用可能性2019年05月26日

このところ夏のような暑さが続いているが、電気を消費しない冷房はできないものだろうか。以前、人から聞いた話だが放射冷却という方法がある。伝熱には熱伝導や対流のほかに輻射伝熱があり、電磁波による熱エネルギー放射だから真空中でも伝熱できる。全ての物質はその温度に応じた熱エネルギーを輻射している。黒体輻射のエネルギーをEとし、絶対温度をTとすると、E=σT⁴という関係がある。これをステファンボルツマンの法則といい、σはその係数である。簡単に言うと黒体の全輻射熱流束は絶対温度の4乗に比例するということで、絶対温度の上昇に伴って輻射される熱流束は急激に増加する。宇宙はビッグバンの名残りの背景輻射で3Kの絶対温度つまりマイナス270℃位の超低温であり、太陽が沈んだあとの宇宙から地上へ流入する熱輻射は殆どゼロである。一方地上の熱は宇宙に向かって輻射放散されるため差し引きで地面が冷やされる。昼間は地上が太陽熱で温められるが、太陽が沈み、晴れ渡った夜は急速に気温が下がるのはこのためである。(夜間でも雲がある場合は地面からの輻射が雲に吸収されて温まり、この雲から熱が地面に再放射されるから放射冷却効果は小さくなる)。これを使えば宇宙に熱を捨てることによる冷却が可能となるが今の所、晴れ渡った夜間しか実現できない。外からの逆の熱流入がある場合は遮断しなければ温められてしまうが、遮断すれば中からの輻射による熱放出もできなくなるというジレンマがある。侵入する熱源としては太陽や空気等による輻射熱や伝熱や対流熱がある。これらが侵入熱<放射熱となるような遮蔽板があれば晴れた夜間でなくとも放射冷却が可能となる筈である。これを実現するには内側から外に出る輻射を透過し、外から侵入する熱は遮蔽や反射する材料が必要だ。イメージ的には内側から見た場合。透明なガラスのようであり、外から見ると鏡のように光を反射するマジックミラーのような板だろうか。これに近い材料は近年実現しつつあるがまだ十分な性能ではないようだ。このような材料の性能が向上すれば冷房冷却に必要な電力を大幅に低減できる筈だ。この板が液晶のような性質で電気的にその表裏の特性を反転できれば、冷房と暖房が両立できる。将来そのような材料が実現できる日が必ず来るだろう。

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