地震の予測2019年05月14日

日本ではマグニチュード8以上の大規模地震は、南海トラフ沿いと三陸沖の2つにほぼ集中している。南海トラフ沿いの大規模地震(M8以上)は、今後30年以内に発生する確率が70から80%であり、昭和東南海地震(M8:1944)・昭和南海地震(M8.1:1946)の発生から既に70年以上が経過していることから切迫性の高い状態と言われている。一方、三陸地方では昭和三陸地震(M8.3:1933)のあと東日本大震災(M9:2011)との間に78年の間が空いている。大規模地震は100年~200年くらいで起こることが多いが、必ずしも周期的ではなく、数百年の間が空くときもあるし、ほぼ連続して起こることもある。だから南海トラフで前回の大地震から70年以上経過しても次の発生を予測することは不可能である。30年以内に80%などと言われても何の参考にもならないと言えるだろう。この南海トラフ地震予知のために膨大な税金が投入されてきた。しかし、東日本大震災の予知はできなかったし、何より熊本地震に至っては何の心配もされていなかった地域で青天の霹靂のように発生している。これらから今では地震予知の信ぴょう性を疑う人も多くなっている。そもそも地震は破壊現象である。雪の結晶の研究などで名高い中谷宇吉郎によれば物質の破壊現象は、物質の中の極微の弱点が重要な要素として現象を支配する不安定な現象である。こういう不安定な破壊現象は現在の科学では取り扱いかねる問題だ。均質な物質の棒を作ってそれを曲げる場合、どこが折れるということは火星に行ける時代になっても現在の科学では予言ができない。この点に科学の強力さと限界とがある。一方、地震の前兆を捉えることで予知ができるという主張もある。地震の前に生物の行動に異変が生じるとか、電磁波ノイズや磁気の変動が生ずるとか言われるが、はっきりしない。電磁ノイズに至っては地中深くで発生する地殻の割れに伴う圧電効果で高電圧が発生すると言われるが、一種の電磁シールド状態の地中からどのようにしてその電磁波が地表に出現できるのかを説明できていない。前兆段階の僅かな地殻の割れで電磁ノイズが出現したとしても弱すぎて他のノイズと識別できないだろう。仮に1年以内に大地震が起こると予知されても、その情報を生かすのは難しそうだ。現在、原理的に予測不能な破壊現象を予知しようとする地震予知活動はそのことを裏付けるようにこれまで何の実績もない。現時点では地震予知はできないという前提に立って、起きた場合の対応をどうするかに注力するしかないのかもしれない。(磁気の変動については電離層にまで影響し、電波伝播の異常とも関わるなどの説もあるが今のところ仮説のみのようだ)

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