現人類の祖先2019年05月11日

ミトコンドリアは細胞内にあるエネルギーを生産する小器官で独自のDNAを持っている。このミトコンドリアのDNAは母からのみ伝えられる。従ってこのDNAを追跡すれば母系が途絶えない限りどこまでも母系の祖先を突き止められる。このDNA解析で行きついたのがアフリカに20万年近く前にいた女性。有名なミトコンドリアイブと呼ばれる現人類の先祖となる女性である。これによりホモサピエンスはアフリカから全世界に広がったと結論づけられた。絶滅したネアンデルタール人もホモサピエンスと交配していて、欧州・アジア系人には数%のネアンデルタール人のDNAが入っていることが分かっている。近年、シベリアのデニソワ洞窟で発見された小指の骨で別の人類の存在が判明しデニソワ人と名付けられた。さらに最近チベットでもデニソワ人の化石が発見されて驚くべきことが判明した。デニソワ人はアジア地域に広く分布し、さらにオセアニアでは1万数千年前までデニソワ人が絶滅せず現人類との交雑が続いていたという。これらから現人類ホモサピエンスは、ホモサピエンスを主体としたネアンデルタール人とデニソワ人などとの混血種であると言える。人種により容姿などが大きく異なるのは、アフリカ人が純粋種ホモサピエンス、ヨーロッパ人がホモサピエンスとネアンデルタール人との混血種、アジア人やオセアニアなどの原住民がホモサピエンスとネアンデルタール人・デニソワ人の混血種であることに由来するのだろう。金髪碧眼で白い肌の白人は北欧に住んでいたネアンデルタール人から受け継いだ形質であり、アジア系の顔立ちはデニソワ人らから受け継いだ形質かもしれない。ネアンデルタール人やデニソワ人は絶滅し、ホモサピエンスが繁栄したことから、以前はホモサピエンスの頭脳や能力が優れていたという見方が多かった。しかし調べるにつれてホモサピエンスがネアンデルタール人よりも優れている点は殆ど無いことが分ってきている。唯一ホモサピエンスが優れているのは生殖能力が旺盛だということだけのようだ。この生殖能力の差がネアンデルタール人やデニソワ人の絶滅の原因であった可能性もある。しかしネアンデルタール人やデニソワ人の血は確実に我々の体の中に残り生き続けている。現人類は自らをサピエンス(賢い人)と名付けて思い上がっていたが、賢さはむしろネアンデルタール人の方が高かったのかもしれない。従ってダーウイン流に表現するなら、“生き残るのは賢い者ではなく、生殖能力が高い者である”ということになりそうだ。

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